「瑠夏ー」
「ねえ瑠夏ってば〜〜上手く塗れなあい やってー」
「すまない今手が離せない」
「ん、ぅ」
「碧音」
「あれ…寝ちゃってた」
「ああ、少しだけな」
「くしっ」
「おい、大丈夫か」
「んん、ちょっと冷房にあたったみたい」
「部室で寝るから」
「はあ ちょっと 何それ」
「今寝てたの?碧音お姉様が??」
「起こしなさいよ、運びなさいよ」
「はアーーー?嘘碧音お姉様が風邪引くでしょぉ!!!?ありえませんけど???」
「違うんだ、その…」
「…疲れてるかって」
「尚更っ!なに、なになに隣で寝てるのを黙って見てたって言うの?」
「うっ…」
「はんっ!寝顔拝んでたでメンバーの風邪引かせるたぁアイドル部の部長がっ聞いてっ呆れるわっ」
「悪かったよ。碧音もすまない」
「いいのよ全然、私が悪いから。珊瑚ちゃんも心配してくれてありがとう」
「お姉様、なんてお優しい…こんな素敵なお方にお風邪でも引かせたらアイドル部の、そして人類の損失損害大災害だわ…!ねえ部長さん」
「はい本当にすみませんでした」
「声小さいわねお姉様に聞こえてないわよ」
「…ふふっ。珍しく瑠夏が珊瑚ちゃんに押されてる、今日の瑠夏、なかなかに面白いわ」
「他人事か…元気なら教科書片付けろ。宿題、今日の分終わったんだろ」
「「はあい一条先生」」
「なっ…。やめろ、先生は」
「あは、師匠って呼ばせてるのはどこの誰さんかしら」
「かしら〜」
「あれは那岐咲が勝手に…」
「もぐもぐ」
「ふーん、不思議な味ね、これ」
「…」
「ねえ瑠夏」
「瑠夏、かわいい」
「な、何だ急に」
「きれいなほっべた…こっちのほうがおいしそう…♡♡♡」
「まだ寝ぼけているのか…?」
「さ」
「珊瑚、この箱は何だ」
「あは、それねぇー、奏先輩の差し入れマカローンっ」
「っ」
「ま、まさか」
「1個減っている」
「ひっく」
「感謝しなさいよね、奏先輩に。あはー何て素敵な先輩なのかしら♡」
「あ、絶〜対っ私の分残しなさいよ?…あミスった最悪」
「…っ珊瑚」
「しゃセーフっナイスリカバリー」
「珊瑚っ!」
「無理ぃー今手が離せなーい」
「走るぞ 珊瑚」
「無理ぃー」
「ああっまったく」
「ちょっと 手何何何」
「いいから!」
「まだ親指塗れてないの! あー、あと5分、待って」
「あ〜〜〜??!ミスったじゃない!! 集中してたの邪魔しないで!」
「…て お姉様顔まっかっか!もしかして熱あるんですか!???」
「瑠夏ぁ!お姉様が本当に風邪引いたら承知しないわよっ!!」
「るぅか〜〜〜〜〜〜?ろこいくのっ」
「話は、あとだっ」
「ね瑠夏まってどういう状況なの!サンダルっ脱げるっ」
「振り返るな!とにかく部屋を出るぞ!」
「な、何なのよ…ごめんなさい碧音お姉様、出発までには戻りますぅ〜〜ー」
「ここで少し待とう」
「はあっ…はあっ…っ、足、台無し」
「そうだな、すまない」
「塗り直し。お姉様にも塗って差し上げる予定だったのに」
「は〜〜最悪、今日の撮影、海柄でおそろにする約束だったんだから」
「ああ、悪かった」
「お姉様は本当に風邪じゃないんでしょうね」
「…そのことだが」
「もういいわ」
「脱いで」
「は」
「足出して」
「あんたも塗ったげる」
「いや、私は」
「私は午後の海の撮影には行かないぞ。お前と碧音と奏の3人だろう?」
「じゃあついて来れば」
「ついてくって…」
「撮影終わりに誕プレ渡すの。さっき渡すつもりだったの。瑠夏のせいで予定がずれ込んだんだから、瑠夏にも協力して貰いますぅ」
「部長命令だ。なーんて、瑠夏の真似。はーなかなか気分が良くなってきたわっ」
「おい、まだ行くって言ってないぞ」
「それ」
「もうかたっぽ脱いでるじゃない」
「まだ動かないでよ」
「ああ」
「…さっきの話だけど」
「何」
「当たり前でしょ 授業中も完璧なんだから、お姉様は」
「はあ…聞いていたのか」
「どうしてお前が得意気なんだ」
「当たり前よぅ 碧音お姉様の才能は完全完璧、魅力が溢れて止まらないんだから」
「…ああ、はいはい」
「…それにこれだって、瑠夏の方が上手いし」
「ずるい」
「…」
「2人だけの約束だったけど」
「私がやりたいの、だから一緒に来なさい」
「最後まで1から百まで全部、見逃したくない」
「…そうか」
「…何の話かわからないよ」
「…ぁりがと」
「ねえ動かないでって言ってる…」
「あ…なに、頭わしゃわしゃしないで 何よ」
「お返しだ」
「るか〜〜さんごちゃーーん?どこなのぉ」
「いないんだ やっぱり」
「まーちゃんなら、すぐにわかるのにな、ぐすん」
「もう 2人して私を置いて行くんらから ずるい」
「………」
「んー」
「言ったじゃない しんらいしてるって」
「こめんなさい」
「ごめんなさい、るか ゴールにあなたの椅子は無いかもしれない けど」
「けど、もう少しだけ」
「…ひっく」
「ねえ瑠夏、ここ、どうやって解くの?」
「ん、見せてみろ」
「ああ、ここ」
「4章は授業で触れてない問題があるから、飛ばしていいって…終業式の日に先生から連絡回っただろう。聞いてなかったのか?」
「あら、そうだったかしら」
「で どう解くの?」
「は?だから…」
「引っかかったままじゃ嫌なの、瑠夏ならわかるんでしょう?」
「…補助線を引く応用問題だよ」
「なるほど」
「じゃあ今日はここでおしまい♪」
「…」
「前から思っていたことだが」
「碧音は私のことを反響板として使っているような気がするな」
「対話なんてする気はなくて、あらかじめ返ってくる言葉を予想してるみたいだ」
「どういうこと?難しくてよくわからないわ」
「いや…なんでもない、聞かなかったことにしてくれ」
「気になるわ」
「…成績はトップクラスなわけでもないのに、学外の学力テストは高得点」
「勉強頑張ったからよ」
「それも、嘘じゃないんだろう」
「本当は、先生の話だってちゃんと聞いてるんだろう?先生の出しそうな問題を予想して、狙って勉強すれば満点だって取れる…それくらいは出来そうだ なのにそうしないんだな」
「考えすぎよ そんなに器用じゃないわ」
「プリズムステージ予選で私が碧音に聞いたこと、覚えてるか」
「何だかわからないけど…わたしはあなたも珊瑚ちゃんも信頼してる…いつも言っているでしょう?これじゃいけない?」
「私達に興味があるか?」
「ある」
「そうかな」
「うん」
「はあ、やめよう…変な話をしてすまない」
「…ふふっ」
「なんだ」
「やっぱり瑠夏は、私をちゃんと見てくれるなーって思って」
「…少し違うな」
「それは、碧音が見たいようにしかものを見れないからだ」
「ふうん」
「瑠夏が言うなら、きっとそうなのね」
「だったら、」
「瑠夏は私が見たくないものも、ちゃんと見てね」
「将来のこと。アイドル部のこと、ステラマリスのこと…まーちゃんのこと」
「そうだな。部内対抗戦、夏祭り合同合宿雑誌の取材、8月はイベントお仕事も目白押し」
「ああ、あと甘いものも少し控えた方が良いな」
「聞こえなーい」
「聞け お前もちゃんと考えてくれないと困る」
「なんとでもなるもの。テストだって合格点ばっかり貰っても、それってつまらないわ、違う?」
「はあ、いつもそうだ…お前といると、いつまでもゴールテープが見えない道を歩かされてる気分になるよ、こっちは真っ直ぐ歩いてるつもりなんだがな」
「なあに、今日の瑠夏、変」
「4章は解かなくていいって話」
「じゃあ瑠夏は、どうして一緒に解いてくれるのかしら」
「さあな」
「お前に興味があるからじゃないかな」
「うん…そうね」
「…ふふ」
「変な瑠夏」
「…碧音?」
「…」
「…まったく」
「風邪引くぞ」
「珊瑚ちゃん、瑠夏、お帰り」
「急に飛び出してすまなかった…コンビニに行っていた」
「それで、……もう大丈夫なんだよな」
「んん、そうね…夢かしら…?さっきまで何してたか、思い出せないの」
「ま、まあ良かったじゃないか、宿題を終わらせたことは覚えてるだろう」
「なあに…?やっぱり今日の瑠夏おかしいわ、怪しーい」
「ま、まさか。あは」
「瑠夏のノート邪魔よどけどけ〜〜!じゃ~ん!お姉様差し入れでーすっ!」
「こら珊瑚散らかすな」
「ありがとう珊瑚ちゃん!これ知ってる!バターが入ってるやつだ!」
「アイスも買ってきました!碧音お姉様、どれにしますか?」
「あまり選ぶ時間はなかったんだが」
「早く選ばないと溶けちゃいますよ さあさ」
「そうね」
「ねえ瑠夏、さっき寝ていた時、」
「私のことを見てたでしょう」
「っ」
「ふふっ♪」
「お前はっ…!」
「アイス、」
「瑠夏が選んで」
「あ、ああ…」
「…これかな」
「ふ〜〜ん、なるほ、ど」
「で、私はこれだな」
「やっぱり夏はチョコアイスね んま〜!」
「瑠夏」
「やばっキーンてする」
「正解」