
星占い(西洋占星術)では、天空における太陽の通り道である「黄道帯」に位置する12の星座を用いて占いをします。
12星座は、それぞれが独自の価値観や文化をもつ王国のようなものであり、かつその流れの全体が、人が生まれてから死ぬまでの一生、あるいは人や物事の成長が一巡りする循環を示す、と解釈します。
12星座は、さらに別の視点により、性質の共通する複数のグループにも分けられます。そこで主に用いられるのが、質(クオリティ)、四元素(エレメント)、支配星(ルーラー)の3つの観点です。
それぞれの星座の持つ意味合いは、これまで占いの世界全体で合意されてきた認識によりますが、中には共通項や法則があり、一定の物差しをもとに体系化して整理することもできます。その主だった物差しが上記で述べた3つなのです。
【星読み論】の各記事では、これらの区分について、各星座に特化した解説をつど行なってきました。しかし、グルーピングに用いる理論の体系全体の概括があった方がわかりよいかと思い、ここにまとめることとします。
これは、私が星占いの各星座をスケッチする際の原理原則を記した方針書、あるいは基本レシピのようなものです。
各区分(「活動宮」、「火」の元素など)の詳細については別途、解説を連ねます。ここではまず、占いに用いる区分の考え方全体を大まかに見渡します。
目次
質(クオリティ):活動宮 - 固定宮 - 柔軟宮
四元素(エレメント):火 - 土 - 風 - 水
支配星(ルーラー):太陽系天体との対応関係
1. 質(クオリティ):活動宮 - 固定宮 - 柔軟宮
季節の始まりの頃 - 盛りの頃 - 終わりと次の季節への接続の頃、という時期ごとの区分が「質(クオリティ)」であり、これは星座ごとの動き方、スピード、物事へ取り掛かる態度を示すといいます。
時期ごとに「活動宮 - 固定宮 - 柔軟宮」という名が与えられ、
・活動宮:活発でスピーディで能動的だが、飽きっぽい
・固定宮:安定感があり粘り強いが、受け身で鈍重
・柔軟宮:変化に強く自在に速度を調整できるが、優柔不断
と、性質がまとめられます。
四季ごとに3つの質があり、春であれば「牡羊座-牡牛座-双子座」のように、並びの連続する3つの星座が、常にこの順番に該当します。
2. 四元素(エレメント):火 - 土 - 風 - 水
四元素は、12星座を前から順番に「火 - 土 - 風 - 水」という4つの元素(エレメント)に当てはめるやり方です。
四元素という区分は、西洋占星術やタロットなど占いの文脈にとどまらず、古代ギリシアの頃から思想や哲学、錬金術などに広く用いられてきた分類法です。
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それぞれの元素が示すものは、以下のように記述できます。
・火は、光や雷や霊魂のように実体がないもの、火や熱された機体のように上昇・向上するものを指します。
→物を激しく変化させる力のあるものとして、他者を攻撃し勝利を得るための激しい行為(闘争、暴力、戦争)や、上昇し高みを目指す高尚な態度(知恵、文明、科学)を示します。
・土は、土や肉体や植物のように実体のあるもの、大地のように状態が変化しない、安定したものを指します。
→人がものの実体を捉えるための刺激としての色や形態や匂いや味(五感、体性感覚)、理念や概念に対する現実(金銀などの貨幣、実益、仕事、生活)を示します。
・風は、大気や風のように実体がないものの他、風に乗って広がり届く不確かな噂や情報、理性でしか捉えられない思考を指します。
→人がものの特徴や性質を捉えるための観念(言葉、記号、情報)、それを用いて表現される関係や論理、コミュニケーション、あるいは現実を離れた理想や理論、理念を示します。
・水:水や液体のように実体のあるもの、溶媒のように物を溶かして一体化させる、異なるものが融合する作用を指します。
→人の合理では説明できない感情や情動、生きるために必要とする他者との情緒的なつながり(愛情や愛着)、それによって異なる個体が結び付けられたもの(家族、仲間、共同体)を示します。
12星座は、後ほど説明しますが、順番に上記の元素が割り振られています。射手座なら火、山羊座なら土、と、大まかに示される各星座の性質が上記ということです。同じ元素の星座同士は価値観が共通するため、比較的シンパシーを得やすい関係にあります。

また、星図(ホロスコープ)は上記のように円環上に12星座が位置すると考えます。ここで、同じ元素の星座を3つつなぐと、大きな正三角形ができます。これをグランド・トライン(大三角形)といい、例えば個人の誕生した瞬間の星図にこの配置がある場合、その方にとってはその元素が非常に大きなテーマを持っている、と読みます(その元素を無意識レベルでよく扱いこなせる等と解釈します)。
なお、それぞれの元素は、実際にその名で呼ばれる現象や物質に着想を受けていますが、区分としては物事の状態や様相、概念の動き方など、広く抽象的な枠組みを指すと理解してください。
これは、占いにおける象徴(symbol)の発想です。例えば「ハトは平和の象徴」とされますが、「平和」という概念にはハトの物理的形態や生態的特徴が必ずしも多く備わるわけではありません。ただ、ハトのもつある種の特徴(穏やかな気質や人の生活に近い生息域)またはハトにまつわる伝承や物語(ノアの方舟)などを総合した、人びとがハトに抱くイメージの総体が、その中からある種恣意的に、主観的に抽出され、「平和」という概念と結びつけられているのです。四元素も12星座も、こうした発想によって「占いにおける意味合い」が緩やかに定義 ≒ 合意されています。
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上記の四元素を、さらに大きな分類によって分け直すと、以下の図になります。

縦軸と横軸、そして4つの象限それぞれに名称を与えています。これらを順に取り上げて説明すると以下の通りです。
・「火 - 水」は主観軸です。人の直感や情緒など、ともに主観の内部に湧き起こり、客観的な説明や共有が困難なものを示します。「風 - 土」は客観軸です。情報や感覚など、ともに言葉や表現を用いた客観的共有が(比較的)可能なものを示します。
・「火 - 風」は熱という性質で、どちらも動的です。揺れ動いたり他者に働きかけるもので、男性的といわれます。「水 / 土」は冷という性質で、どちらも静的です。その場にとどまり他者からの働きかけを受け入れるもので、女性的といわれます。
・「火 - 土」は乾という性質で、個々の事物を想定します。他の個体との相対的な関係は意識せず、独立した別個のものとして絶対的に物事を捉えます。「風 - 水」は湿という性質で、もの同士のつながりを想定します。複数の事物や全体のつながりや連関、相互作用を中心に物事を捉えます。
これらの区分をもとに、再び四元素のスケッチを編み直すなら、
・火:熱く乾いた性質。バラバラの事物の動的な作用。闘争や摩擦。
・土:冷たく乾いた性質。バラバラの事物の静的な状態。詳細な事実や特徴。
・風:熱く湿った性質。事物同士の関わりを客観的に捉える。関係性、法則。
・水:冷たく湿った性質。人同士の関わりを主観的に捉える。絆や縁、結びつき。
この通り表現できます。
このように、発想の原理は共通ですが、共通点 / 相違点という視点、あるいは注目する対象をどこに置くかによって、四元素の表現はさまざまに変わります。
こういった分析思考、あるいは抽象と具体の往還がお好きな方がいらしたら、ご自身の言葉でも四元素をスケッチして遊んでみてください。
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さて。ここまでは四元素の個別の性質と、互いの性質の共通点と差異を表現してきましたが、ここからはさらに、四元素全体の連なりについても話を進めます。12星座への元素の当てはめ方は、この点に関連してきます。
「火 - 土 - 風 - 水」という象徴とその並びは、物語構造でいわれる「起承転結」の並びに対応します。簡単な性質とともに並びの意味合いを整理すると、
・火:無から物事が生まれ起こる
・土:具体的な形や状態として固まり定着する
・風:分類や抽象化など、知的ブレークスルーを経る
・水:別々の事物が結合・融合して終わりを迎える
という展開になります。
12星座では、始まりの牡羊座から順番に四元素があてがわれます。
12星座は人の一生を擬えているといいましたが、その流れは上記の展開に当てはまります。牡羊座(火の星座)で誕生した個体の命は、魚座(水の星座)で個を超えた巨大なつながり=救済に辿り着いて終わります。そしてまた巨大なつながりの中から個が生まれる(魚座の次に牡羊座がやってくる)のです。これは一年が経過するとまた同じ季節、同じ日付が巡ってくる、円環的な時間のサイクルを意味しています。
さらに、その大きな12星座の枠組みの中でも、蟹座(水の星座)の次に獅子座(火の星座)、乙女座(土の星座)……というように、「火 - 土 - 風 - 水」のサイクルが小さく繰り広げられます。これもまた、家族や共同体のつながりに落ち着く→個としての意識が爆発的に生まれる→現実的な落とし所に収まる→……という流れに当てはまります。
このように、星座は大きい視点でも小さな視点でも起承転結のサイクルを繰り返して進行しています。
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ちなみに、先の「質(クオリティ)」と組み合わせると、火の活動宮なら牡羊座、土の不動宮なら牡牛座、風の柔軟宮なら双子座……という12通りの組み合わせが一意に決まります。このため12星座は「元素 × 質」の区分によって単一の対象が同定されます。これは、「水の柔軟宮は魚座である」「魚座は水の柔軟宮である」と、区分と名称が必要十分に対応し、他に重なるものがないということです。

3. 支配星(ルーラー):太陽系天体との対応関係
「支配星」とは、12星座を太陽系天体と対応づける考え方です。
12星座とは、厳密にいえば、天空における太陽の通り道=黄道帯を、それぞれの星座が位置する領域ごとに12に区分した、空の領域を示します。星占いは、この12の領域を時計の文字盤のように捉えます。文字盤の上を動く12本の針=太陽系の10天体が、ある瞬間にどこに位置しているか?と、まさに時計をみて時刻を読み取ることをして、占いを行うのです。雑誌やTVでお馴染みの「星占い」なら、太陽という針が、誕生した日に文字盤の何分の場所に位置していたかによって性格や運勢を判断します。
そして、12星座の文字盤を動く10天体は、それぞれにホームポジションというべき特別な居場所を持っています。これが支配星の考え方です。太陽なら獅子座、月なら蟹座と、天体がホームポジションの星座にあるとき、その天体が本来の力を発揮してのびのびと振る舞えると考えます。各国を周遊する王様が、自国に戻ってきたようなものです。日本でいえば干支の十二支が生まれと重なる「年男・年女」です。
星座と支配星の組み合わせは、以下の通りです。
・獅子座:太陽
・蟹座:月
・双子座、乙女座:水星
・牡牛座、天秤座:金星
・牡羊座、(蠍座):火星
・射手座、(魚座):木星
・山羊座、(水瓶座):土星
・水瓶座:天王星
・魚座:海王星
・蠍座:冥王星
※()表記は、副支配星の位置付けです。
各星座と支配星は、ホームポジションということで、それらの持つ占いの意味合いも、互いに重なるものとして解釈します。(近年になって発見された天王星、海王星、冥王星は、新たに星座との対応関係を与えられたものです。それまでは()表記にある天体が各星座の支配星でした)
例えば獅子座は、太陽という雄々しい恒星のイメージを引き受け、個人の主役意識が強く、他者に向かって光を放つが逆に他者に従うことを嫌う。蟹座は、古来から女性性の象徴とされてきた月のイメージから、女性や母親、安心感を重視する、潮の満ち引きのように感情が揺らぎやすい。拡大と繁栄の幸運の木星に支配される射手座は、楽観的で上昇志向だが大雑把。幻惑と傷つきの海王星に支配される魚座は、他者への救済を志向するが、現実を生きる実際感覚に欠けがち。など。
各天体と星座の意味合いは必ずしも同等ではありませんが、解釈の要素の一つとして、これらも星座の解釈に含めます。
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さらには、支配星だけでなく、天体にとって居心地がよく高揚する星座や居心地が悪く機能が低下する星座がある、という考え方もあります。これを品位(ディグニティ)といいます。
品位は、天王星以遠の天体が発見される前の古典占星術で用いられた枠組みであり、必ずしも一般的なルールではないようなのですが、私は特に気にせず、必要に応じて取り入れています。
しかし、各要素の解釈はまだ個人的に論が固めきれていないため、ここには記載しないこととします。考えがまとまった暁には追記するかもしれません。
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連載の各記事で解説している星座の意味合いや世界観は、星座のモチーフとなった神話から読み解くこともありますが、私はほとんどこの12星座内の段階(人の一生のうちどの段階に相当するか?)と、「元素 × 質」の組み合わせがどう表現されるか?という二つを中心に組み立てます。
例えば天秤座を例にするなら、以下の通りです。
・12星座では7番目、後半の1番目です。12星座の前半 / 後半は子ども時代と大人時代の区分に相当するため、天秤座は「大人時代の入口」です。一つ前の乙女座が「子ども時代のラスト」であったため、その頃にあった課題や限界を乗り越えて次に進んだ星座です。
・風の活動宮です。風は思考と言葉とコミュニケーション、活動宮は能動的であるため、自ら思考して結論を出す、または熟考して善悪を判断する星座です。コミュニケーション(風)を能動的にする(活動宮)と捉えると、社交や人脈形成など対人対応全般に強いという性質も導けます。
このように、基本的な性質であれば原理原則に沿った演繹の形で導くことができます。(実際の解釈は占い手の言葉や姿勢によって様々に表現されますが、発想として依り立つ部分は占いという世界にいればそう大きく変わりません。私の説明も、多くは先達の書籍や発信を通して学んできたものです)
ここに天秤座のモチーフである正義の女神、またはそれに関連して裁判や調停、交渉、契約といった「天秤座らしい」と解釈できる要素を加えて、肉付けをします。先に述べた、支配星である天体の解釈もここに加わります。
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原理を踏まえた解釈の仕方について、応用的かつ補足になる例を紹介します。
異なる星座が同じ支配星を戴く場合、それらの星座は一見すると分かりづらい共通項でつながっていると読みます。
例えば牡牛座と天秤座は、ともに金星という愛と美の天体を支配星に戴く星座です。ですが、星座の並び順としては二者はかなり離れており、文脈は共有しません。元素と質を比較しても「土の固定宮」の牡牛座と「風の活動宮」の天秤座には、どちらにも共通項がありません。むしろ、元素の土と風は対立する組であるため、価値観には異なる部分が目立ちます。

このことは、星図(ホロスコープ)上の位置関係からも補足が可能です。
円環の対岸=180度の位置にある星座は、互いに裏表、きょうだいのように特別な関係です(牡牛座 - 蠍座、天秤座 - 牡羊座がそうです。原理に照らせば「質が同じで元素が対立しない組」です)。しかし対岸から1つずれた150度の位置は、私は「盲点」と呼んでおり、原理上には共通項がなく相手の価値観や発想が理解できない間柄です。互いを「宇宙人……?」と思ったり、かえって強烈に惹かれたりする組です。牡牛座と天秤座はちょうどこの盲点の位置にあたります。
この一見すると理解し合えない二つの星座が、金星という同じ天体によって支配されます。どちらも愛と美、余暇と快楽、美しいものを尊ぶ点が共通しているのです。
ただし牡牛座は「土」の元素であるため、絶対的な美しさ、五感で受け取られる見た目や形状や色や味の美しさを尊びます。また自分にとって美しいと思えるもの、価値のあるものを重視します。
これに対し天秤座は「風」の元素で、相対的な美しさ、異なる要素が一つに調和したバランスとしての美しさを尊びます。黄金比、均整のとれた体つきなどです。また、その美しさが他者にもわかること、すなわち客観的な妥当性を重視します。
星座や星座の関係を解釈する際には、このように基本の原理に照らしながら、共通項を見つけたり、対比から相違点を見出して差異を理由づけたりして、星座ごとに見出される固有の特徴を描き出しています。