夜中に電車のチケットをとって、仮眠をしてから旅に出かけた。
7時間の電車の旅。持っていた本は読み切ってしまったから、ずっと窓の外を眺めていた。
昼間から、夕方、夜へと刻々と変化していく空。高層ビルが立ち並ぶわたしの街から、だんだんと自然が多くなっていく風景。
緩やかな丘と森に守られて、2本の木に挟まれた白い家。あの家にはどんな人が住んでいるのだろう。
原っぱを見下ろしながら、ぽつんと佇む家。あ、今電気がついた。誰か帰ってきたのかな。
山と山が密集しているところにできた谷へ薄灰色の雲が降りていく。夕方の光が差し込んだ隙間からうっすらと見えた街が見えたとき、なんだか秘密の場所を見つけた気分だった。
平らな水面に映っていた薄曇りの夕焼け。くすんでいる鏡のようだけれど、明日の太陽の色が混ざっているような気がした。
電車の窓から見える世界は一瞬。巻き戻してみることのできない映画を延々とみていた。