ドイツ語の授業に行くのがちょっぴり嫌だった。
気が重くて、あんまり乗り気になれず、ぎりぎりまで家にいた。
春休みに断った弦楽カルテットのチェリストがいるかもしれない、彼女とどんなふうに話したらいいのか、どんな顔をしたらいいのかわからない。
もう一つ断ったピアノトリオのピアニストとはあまり話したくない。自意識過剰な気がするけれど、なんだか彼のいろんな意味での視線を感じるのでできれば避けたい。
「断る」側の葛藤など知らずに、相手は「断られた」という事実だけを手にしているから、「断る」側の気持ちはとても重たい。
足取り重く、1分前に教室に到着して、比較的仲の良い友人の横に席を取った。
教室を見渡してみて、あ、ピアニストの彼女は授業を取っていないんだと気がつく。一つ重荷を下ろせた。
授業時間を過ぎてから、隣に座ってきたのは噂のピアニスト。挨拶もなく、私を飛び越えて韓国語でおしゃべりを始めるので、そういう人間か、とわたしの中での分類が変わった。
授業内で隣同士でグループを、と言われたけれど、進捗状況の具合で同じグループになることを回避。
新しい友人に囲まれて、新しい時間が過ぎていく。
もし、今日授業に行かなかったらずっともやもやとしたグレーな綿を抱えていた。
一歩踏み出せば、踏み出した分だけ変わる。
そして行ってみれば案外新しい出会いも待っていて、古くてわたしが必要としない縁は簡単に朽ちてくれる。
大丈夫、今日もひとつ前に進めたよ。