ずっと気になっていた。スプーンでスープを飲む時。れんげでスープを飲む時。なんでもいい、スプーン状のもので液体を口に運ぶ時。
わたしはどうしても下唇に溢れる。つたって顎にいく。
ずっとそうだった。そしてそうならないように極めて気をつけて、毎回スプーンの中身をすすった後、下唇を舌で拭うか、下唇を噛むようにして液体がこぼれないようにしてた。唇の形が人と違うのかもとさえ考えていた。
つい昨日、妻の同様の動きに注目していたら、彼女は全然下唇に液体がこぼれなかった。
よくよく観察してたら、やっとわかった。スプーンを自分側に傾けないのだ。
そもそも、スプーンの中の液体を吸うようにして、飲んでおり。傾けた重力で口に運んでいない。
これがポイントだった。同じようにすると、私もできた。
おもわず。「どこで習ったの?」ときいた。
彼女は「別にどこでも習ってないねえ。」と答えた。
そう、世の中はこういうことにあふれている。
わたしは大体を知っているような体で生きているが、本当に何も知らない。
もう下唇を都度舐める必要はなくなった。
こういう気付きが生活にあふれて、下唇もびちゃびちゃになるといい。(最後の行はおしゃれにうまいことスープとかけてみたが蛇足だと思う。)