ふと彼の指輪が目に入った。
自分もそこまで変わらない指のサイズだから、彼が見ていないから、そんな言い訳にもならない言葉で誤魔化して、やましい心のまま左手の薬指に嵌める。
きらきらと輝く指輪は、こんなにも卑しくて下賤な俺には全くもってふさわしくなかった。「…はは、似合わない」と外そうとした俺の右手に被さる、彼の手。
「ああ 似合わない。こんな安物のもんじゃなくて、もっと良いものじゃないとな。そのうち、いいのを買いに行こう」
彼は俺の手から「安物」の指輪を抜き取って微笑む。多分それは近い将来にずっと重い約束として俺の薬指とこれからの人生を縛ることになるだろう。
けど、それがいっとうの幸せだと思っている。思ってしまっている。