テレビカードをご存知だろうか?
ビジネスホテルなどにある自動販売機で買えるカードのことで、これを購入すると部屋で有料チャンネルが見られるようになる。上品に包んだが、ようはAVが見放題になる魔法のカードだ。
私はビジネスホテルに行くと毎回このカードを買っている。理由は単純で、幼少期のエロ本を拾ったときのドキドキワクワクエロエロ感が現代で唯一体感できるコンテンツだからだ。
この興奮と感情は今の若者には伝わらないだろう。エロ本を拾ったり、親が所持するAV(ビデオやDVD)を見つけたり、ビデオカードを買ったりするのは、ロストテクノロジーであり、ロストエモーショナルなのである。
今の時代、スマホを開けばエロは見放題だ。無数のエロが手のひらに収まっている。かくいう私も、fanza Plusというサブスクに登録しているため、10万本以上のエロにいつでも指先一つでアクセスできる。
正直、カードを買うメリットは私には一つもない。カードを買う代わりに、好きなAVを買った方がよっぽど有益である。
ではなぜ買うのか?私はエロが見たいのではない。カードを買う瞬間の全神経を尖らせる緊張感がたまらなく好きなのである。
テレビカードの自動販売機はホテルの廊下にある。自動販売機が「私はホテルの健全な設備ですよ」という顔をして仁王立ちしているのである。とんだド淫乱のむっつりスケベ野郎だ。
廊下にあるのだから、買うときには誰かに見られるリスクがある。カードを買う姿を見られるのは非常に恥ずかしい。目撃した人からすると「このあと1人でAVを見る寂しいやつ」という認識になるはずだ。
朝食で再びその人に会ったら最悪である。「テレビカード買ったやつが味噌汁飲んでる」「テレビカード買ったやつが納豆かき混ぜてる」「テレビカード買ったやつが立ち上がった」となにをやってもテレビカードが接頭辞について回ってしまう。楽天カードマンならぬテレビカードマンの誕生である。
そのため、テレビカードを買うときには、細心の注意を払わなければならない。必然的に廊下をウロウロする必要がでてくる。
めんどくさい。恥ずかしい。得することが一つもない。だからこそ、買う瞬間の緊張感がたまらないのである。
悪いことをしてるわけではないし、誰かに迷惑をかけるわけでもない。ホテルのサービスを利用してるだけだ。それなのに、犯罪をする前のようなにじり汗がでる緊張感が全身を包む。
周りに人の気配がなくとも、購入の瞬間に部屋やエレベーターから誰か飛び出してくる可能性がある。ビジネスホテルが恐怖のホラーハウスに様変わりするのだ。
テレビカードを購入したら即座にポケットに入れる。そして、買ったことを誰にも悟られないように、「私は健全なホテルのお客ですよ」という顔で廊下を闊歩するのである。とんだド淫乱のむっつりスケベ野郎である。
部屋に入った瞬間にミッションはコンプリートだ。もはやカードに用はない。購入したあと、お酒を飲んだり温泉に入ったりしていると、カードの存在を忘れてしまうこともをしばしばあるほどだ。
私はエロが見たいわけではない。エロのために行動がしたいだけなのである。それがテレビカードマンの使命なのだ。
しかし、このテレビカードにも変化が訪れている。なんと、テレビの操作だけで課金ができてしまうのだ。部屋の料金と合算してあとで精算する場合もあるし、paypayなどの決済サービスを利用できる場合もある。
寂しい。
また一つエロの文化がロストテクノロジーになっていってしまうのだ。
便利になる一方で、全身が逆毛立つ緊張感を体験する場が淘汰されていく。この文化が失われていいのだろうか?ロストエモーショナルになる前に、若者に継承していくべきではないだろうか?
私はテレビカードの自動販売機がホテルに鎮座する限りは、そのスリルを体験し続けたいと思う。若者への文化継承のためだ。決して私にやましい気持ちはない。決して。
なので、もし仮に私がテレビカードを買ってるのを目撃したときは、「伝承者が文化を守るために部屋でAVを見ている」と思って欲しい。決してやましい気持ちではない。決して。いや、本当に。は?うっせーし!エロに興味ないから!本当に!!信じて!!!