この町に住んで早3年。ほぼ毎日のように通勤で通る道に、名前も分からない小さな神社がある。
かつて一度、立ち寄って賽銭を入れたような気がするが、この神社にどういった謂れがあるのか、ここに祀られている神様がどんなものなのかは定かにはならなかった。
周囲に人家の無い、細い道の途中にあるこの神社だが、時折管理してる人なのか、あるいは町内の係なのか、どなたかがやって来ていて、手入れをしている。また、大勢(と言っても十人いるかどうかくらいだが)の人が集まっていることもあり、私の預かり知らないこの神様は、きちんと人々に大切にされているらしい。
道端にぽつんと立っている道祖神だとか。小さな祠だとか。一見誰も見ていないようなそんなものにも、手を合わせる誰かがいるのかもしれない。そう思えば、何気なくそこにあるどんなものも、粗末に扱ってはならないなという気持ちにさせられる。
職場が変われば、この神社の前を通りかかることも少なくなるだろう。十分な余暇があれば、この神社にいる神様のことを改めて調べてもいいだろうが、今の私は忙しくしていて、生憎それには至らない。
この神社の斜向かいあたりには、一本だけムクゲの木が生えている。個人的に思い入れのあるこの花を撮影するために、夏頃は神社の敷地の端にバイクを停めさせてもらったことがある。背の高い木に囲まれた神社の周囲は日陰が多く、一息つくのにも丁度良い。
夏になったら、ムクゲの花を見に来よう。その頃も、この神社の神様のことを私は知らないままだろうが、その時はお久しぶりですねと、また手を合わせてみようと思うのだ。