常日頃から自分の思考回路を決定づけている根本的な思想みたいなものを、定理という形で言語化してみる。今回は第一弾ということで「思考量保存の法則」について書きます。独自の理論ですので適当なポエムと思って読んでください。
思考量保存の法則
定義
【世の中のだいたいの仕組みは、一部の人がその仕組みを徹底的に考え、その他大多数の人がその仕組みを何も考えず享受できる、という仕組みに落ち着く】
たとえば、ごみ捨てを考えてほしいのですが、ゴミを捨てるときって何も考えないですよね。ゴミ箱にゴミを集めて、指定された場所に出しておいたら、規定の曜日にゴミが集められて焼却なり埋め立てなりされている。
このとき、ごみ捨てという仕組みをめっちゃ考えている人が少しだけいて、その人達がゴミ収集車の配車ロジックから、ルールの策定から、埋立地の確保やリサイクルの予算決済まで色々と行っているわけです。
それによって、大多数の人は何も考えずに所定の場所にゴミを出したらあとはよしなにやってくれているわけです。
仕事での定理の活用
エンジニアというキャリアにおいては、エンジニアとして生きていくにあたって、どの領域を「仕組みを考える側」として挑み、どの領域を「享受する側」として生きていくか取捨選択することが大事。
たとえばフロントエンドエンジニアでReactを学んでいる場合、最新のOSSのIssueやDiscussionを追いかけ、海外の記事も含めてキャッチアップをし、標準仕様も合わせてマスターして、Next.jsのStreamingを一生素振りしているような人は、実務において、アーキテクチャや技術選定をリードする「仕組み側」でしょう。
一方で、戦略的に「享受する側」になるのもよい。フロントエンドエンジニアでも、Reactでは仕組み側をやっているので、CSSは享受側に回るといったことをしないと、勉強しているだけで人生が終わってしまう。
「仕組み側」の特徴として、「孤独」というのがある。上記のようにReactをキャッチアップしていれば、必ずといっていいほど周囲から孤立する。職場でも同じくらい追っている人は他にいないはず。仮にいたらその人に任せるか自分でやるか決めたほうが効率がいいから。
「享受側」の特徴として、「噛み砕かれた情報を中心に仕入れる」というのがある。仕組み側の人が1次情報を集めているが、そのまま享受側の人に伝えても、享受側の人はまた他の領域で「仕組み側」をやっているだろうから、Reactについてそこまでキャッチアップしている暇がない。なので、最新情報まとめみたいなフンワリして読みやすい記事にして発信などするし、享受側もそれを有り難く読む。
そのため、享受側の人は、必然的に情報量が落とされたり、蓄積された経験が噛み砕かれた結論に至ったものを受け取るだけになるので、そのスタンスでは一生仕組み側になれないことも重要な点。
雑感
上記の説明を踏まえて、以下のようなことを考えることができます。
私はaspidaというTSライブラリが出始めた当初から使っている。最初から使うことはリスクだった。すぐ廃れる可能性があるから。しかし流行ると信じて使い続けることで、いまではLTや記事ネタになるし、開発者とも交流があって技術的にもいろいろな知見が得られた。aspidaにおいて私は仕組み側に回ったわけだ。仕組み側に回るのはリスクが伴うが、リターンもある。
上記から、仕組み側になるのは意外とハードルが低い。aspidaそのものの開発をしなくても、エバンジェリストとして試用とか拡散をしていくことで、十分世の中から見たら仕組み側になれる。
自分の専門領域の中で、1つでも仕組み側に回っているものがあると、精神衛生上とてもよい。まずは実務で触っているライブラリとか、アーキテクチャから選んで、「孤独」になってみて、(ちょっとした)リスクを負ってみるといいのかもしれない。
エンジニアと技術について喋るときは、、自分が仕組み側になっている点について知見を提供しつつ、相手からその人が仕組み側になっているところを聞き出して、情報を教えてもらうような関係性になると、お互い高めあえる関係になると思う。
噛み砕かれた記事(まとめとか、ベストプラクティスとか)だけ読んで、キャッチアップしているとか、専門性を得ていると思うのは実は間違っていて、その記事を発信している人はもっとたくさんのキャッチアップや試行錯誤を経てその記事に至っている。噛み砕かれた記事を読んで満足するのは、自分が意図的にその領域で享受側に回っているとき。
現実世界では、「本当は仕組み側に回りたくないとか、経験が不足しているのに、業務都合上仕組み側にならざるを得なくなってしまった」みたいなことがめっちゃある。成り行きでEMやることになったのであわててフロー整理したとか、スタートアップだと良く起きる。こういうときに、享受側に回っている人は愚痴を言うのではなく、「今仕組み側に回っている人は、仕組み側に回るだけの情報を得ていないし、経験も追いついていないんだ!」と思って、逆に自分が仕組み側に回れるチャンスだと思えるととても良いと思う(飛び級で評価されるチャンス)。
ソフトウェア開発は究極の仕組みですね。一部のプロダクトメンバーが作った仕組みに、何千人何万人という人がただ乗っかって利用できるので。なので、エンジニアであれば、たとえ技術的な観点では享受側としても、世の中で見れば仕組み側なのです。めちゃめちゃ考えてものを作って、みんなが何も考えずに使えるサービスにしましょう。
いったんこんなところにしておきます。
ちなみに
例外的に「全員がそこそこ思考しないといけない」場面もあります。これは仕組み観点では望ましい状態ではなく、かなりの負が生じます。
世の中であるのは「中途採用」とかです。中途採用って、誰かが「あなたはこの会社に行くべき!」って言ってくれないですよね。みんながそれぞれキャリアについて考えて選ばないといけません。なので、中途採用にまつわる仕組みは究極的に中途半端になる運命にあります。どこまでいっても個人の自由を担保しないといけないので。
これはもちろん自由とのトレードオフなので、どっちが良いとか悪いとかではないです。ただ、思考量保存の法則に反する領域への課題解決は困難を極めます。実際、中途採用の方法って、ずっとエージェントか、スカウトを送れる媒体しかないと思うし、今後もしばらくそうなんじゃないかなと思います。難しいのです。
次回予告
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気になる理論があったらコメントください!またポエム書きます✏️