2023年振り返り、音楽編

meiko
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筆不精な者なりに、書かないと忘れてしまうことも最近多いなあと思うので、あそびの領域だけでも2023年を振り返ることにした。音楽編。

2月: レッチリ東京ドームライブ

なんでもなかったはずの週末、急遽行けなくなった同僚の友人からチケットをありがたく譲り受け、RHCPのドームライブに行くことに。たった四人から放たれるとんでもなく分厚い音と、突き抜けたエンターテイナーぶりに圧倒された。

ライブ後は、よく知らなかったジョシュのギタリスト時代についてYouTubeでキャッチアップした。上半身裸がデフォのパフォーマンス映像を目にした子供たちは、親しみを込めて彼らを「ムキムキおじさん」と呼ぶようになった。なぜか子はDark Necessitiesをすこぶる気に入り、わたしはラテン味の強いDid I Let You KnowやLook Aroundを繰り返し聴いた。

Fleaは昔からかっこいい人だなあと思ってたけど、このインタビューの締めを見ていっそう好きになった。

4月: うん十年ぶりのWOMB

ディープハウス/テクノ好きのUS同僚が日本に来てリッチー・ホウティン観に行くというので同行した。BPM高めのピュアなテクノが楽しい。

クラブなんて何年ぶりだろうか。ドリンクの値段昔と変わってない気がするんだが大丈夫か。なんだかんだで午前4時過ぎまで踊りつづける。

5月: 会社Slackのmusicチャンネル

リモートワークでの個人作業中、みんな何を聴きながら仕事してるんだろう。よかったら好きな音楽をポストしてね、と会社のSlackにゆるい音楽チャンネルを作った。

いろんな文化圏から人が集まる勤務先では、台湾オルタナロック、アラブ歌謡、アニソン等々、自分では見つけないだろう音楽が集まると同時に、出身国によらず過去に流行ってた曲って結構被ってるんだな、という発見もあった。全社ミーティング後のディナータイムには一度、チャンネルに挙がった曲を並べてつくったプレイリストを流した。

ある日、チャンネルに「今日はFour Tet聴きながら作業してる」ってポストしたら、UKから来たエンジニアリングマネージャから「Four Tetと同じ高校通ってたよ」とリプライが来て度肝抜かれる。世界は狭く、かくも愉しい。

6月: Livin’ off borrowed time

親戚の結婚式のため十数年ぶりにニューヨークに行く機会を得て、滞在期間中にBlue NoteでTalib Kweliがライブするというので飛び込んだ。往年のヒップホップMCがメジャーなジャズクラブで普通にライブバンドをバックに演る時代になったんだなあと思う。

ご本人も「俺いま47だけど、学生のころはBlue Noteなんてファンシーでとても手の届かないとこだった」と。そうよね。

楽曲も、いまは亡きJ DillaやMF Doomトリビュートが多くて中年の涙腺は早々に崩壊した。バンドはKMDのPeach Fuzzのイントロすら覗かせる。ラップのライブは初めてという少し若い世代の同行メンバーにも、過去にMary J. Bligeが歌ってたI tryあたりは親しみやすかったようでよかった。

締めはGet By、20代のころ朝会社に向かう道を歩きながら聴きまくった曲。ハモりコーラスパートを大爆唱。

10月: Kassa Overall

2023年、一番好きになったアーティスト。ヒップホップやジャズのものすごく好みな部分が凝縮された音楽を凄まじい破壊力をもって築き上げる。

Ready To Ballは、おそらく一年で最も聴いた曲。通勤中にIf you ain’t got no money then shut the… と口ずさんでても、口パクなら許されよう。

このTiny Desk構成に近いバンドメンバーで来日するというので、迷わずライブに行ったし突然のDrop It Like It's Hotにはまじで鼻血出るかと思った。Hookが終わるか終わらないかのタイミングで、トモキ・サンダースのサックスが宙を裂く。

そんな超絶ミュージシャン集団なんだけど、「また日本戻ってくるからみんなグッズ買っといてな!」ってステージで話すKassaに対して

Kassa「T-shirt.」

Tomoki「ティーシャツ。」

Kassa「Hoodie.」

Tomoki「パーカ。」

という具合に、逐一ほんわか翻訳を入れてくれるトモキのホスピタリティにしびれた。かと思えば、客席ダイブ中に頭につけてたお花を失くしちゃって探してる。お花はあとでちゃんと見つかってた。よかった。

12月: ダブル第九

年の暮れ、オーケストラ音楽を聴きにいきたくなる日本人の習性みたいのがあるのかないのか、しらんけどとりあえず無性に行きたくなったからチケットを調べる。12月のオーケストラコンサートはたいがいベートーヴェンの第九。他にも魅力的な曲目ないかなーと贅沢なサーチをしてたらドヴォルザークの第九「新世界より」をセットでウクライナ国立フィルが来日公演してくれるではないですか。これは夫も好きなやつ。やった、デートじゃん。

ミコラ・ジャジューラ率いるフルオーケストラはテンポ速めでグイグイくる。全四楽章ヘッドバンギングできるくらいアグレッシブなクラシック。

新世界で盛り上がったあとのベートーヴェン第九は、二世紀くらい戻ったかなってくらい古典的に聞こえた。どれだけ時代が違うんだろうと思って調べたら

  • 1824年: ベートーヴェン 交響曲第9番 ニ短調 作品125

  • 1893年: ドヴォルザーク 交響曲第9番 ホ短調

と、ゆうて70年程度のギャップだった。海を渡った近代クラシック音楽の進化よ。終演後の舞台には青と黄色の二色旗が掲げられていた。

番外編: アメリカのウェディングパーティー音楽

アメリカでの結婚式で、ひとつ楽しみにしていたのがパーティーDJがかける音楽。意外とABBAのDancing QueenとかQueenのDon’t Stop Me Nowとか、日本でもド定番の曲が多かった。しかしEmpire State of Mind、これは同じド定番でもアップステートニューヨークでかかればご当地アンセム。実際、間違いなくYou’re in New YorkだしThese streets will make you feel brand new, big lights will inspire youだわよ。みんなぶち上がり歌えや踊れ。

それはもう夜も更けて、会場から駅への送迎バスを逃してしまう。でも次の電車を逃したら今日中にマンハッタンに戻れない。こんな郊外ではUberなどおそらくおらん。途方に暮れていると、他のゲストの中から名乗りを上げてくださった初老のご婦人が「あんたたちがトレインに乗るのを見届けるまではあたしは帰らないよっ!」と電車組のわたしたちを乗せて夜道を飛ばす。おお、なんというステートオブマインド。

暗い森の車道を突っ走るなか頭じゅうリフレインしてるニューヨーク、ニューヨーク、ニューヨーオォォク。ああ、お願い待ってハドソンライン。マンハッタン(の、さらに先のブルックリン)に帰りたいの。

車を降り、親切なご婦人にハグする間もなく裾を引きずる長さのドレスを捲って、ヒールで駆っぱしる。今まさにホームに入ってきている列車と並走しながら。ああ、こんなん一生二度とやらんだろうな。ギリ乗り込んだグランドセントラル行きの車内で笑い泣きしながら、アリシア・キーズもびっくりの夜。

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わたしと世界をつなぐ音楽、ありがとう。2023年振り返り音楽編、おわり。