父のこと

meimei
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公開:2025/10/8

最愛の父を見送りました。

早2ヶ月が経ち、小さな家人や猫様のお世話もあり日々は進んでいます。しかしまだ父のいない世界に慣れることはなく、毎朝新鮮にショックを受け、ふとした音やにおい、景色に涙が込み上げます。

大好きな父

父は愛情を惜しまない人で、私の人生に、生活に染み渡っています。

学生時代酔って最終駅まで乗り過ごした時も、3.11で帰宅困難者となった時も、幼な子連れの信号待ちで後続車に追突された時も、すっ飛んできてくれる人でした。

いるだけで安心に包まれる唯一無二の存在でした。

そして感性も思考も趣味も近く(カメラ、スキー、山登り、テニス、ダイビング、庭いじりに読書に料理にとたくさん共通の趣味がありました)、父と娘でありながら一番の理解者であり、親友のような存在でした。

生活を愉しむのが上手な人で、年明け倒れるまで、仕事に旅行に孫の勉強の伴走に、壮健そのものでした。

年一回の人間ドックでも特に問題はありませんでした。

年明け救急病院へ

年明け、風邪をこじらせたのか微熱がなかなか下がらず、腹痛も出てきたために大事をとって緊急受診しました。コロナもインフルも陰性、年末年始にいつもと違うクリニックで処方されたお薬が合わなかったのかな、くらいに本人も周りの家族も呑気に構えていました。

それが診察室の空気が一変、入れ替わり立ち替わり険しい顔をした医師たちが訪れ、その日のうちに緊急入院となったのです。

実はこの時点で、既に骨転移含め全身に癌が散っている状態でした。オペや重粒子なども適応外。唯一残されたのは化学療法でしたが、ここにもう一つ不運が重なりました。原発不明癌だったのです。

抗がん剤は、癌のステージや性質、種類に基づき、たくさんの薬剤の中から選択し組み合わせていくのですが、今回のように原発不明癌だと高い効果が見込める決まったガイドラインがあるわけではなく、探り探り治療が進められます。

膨大な検査をし、姿の見えない癌の顔を探っていく様は、まるで重苦しい推理小説を読んでいるかのようでした。

気が遠くなる、心が擦り切れそうな時間でした。

記憶とは不思議なもの

突然始まった7ヶ月の闘病はとても厳しいものでした。

途中骨転移により大腿骨骨折、車椅子生活を余儀なくされ、また抗がん剤の副作用や、腫瘍熱、腸閉塞、食事が摂れないことにも悩まされ、まさに入退院を繰り返す日々でした。

それでも意識は清明であり、とにかく自宅で過ごしたいと願ったため、お家で過ごせる日々を大切にしました。

1〜2週毎の抗がん剤治療や輸血の通院ではめいっぱいおめかしをしてお出かけしました。常に希望は捨てませんでしたが、どこかで、いつか元気になったらの"いつか"はないかもしれない…今この瞬間が一緒に過ごせる貴重な時間だと感じていたからです。常に愛別離苦に苛まれ、祈り涙する日々でした。

このように、闘病中は厳しい時間だったはずなのですが、父がこの世を去り、その記憶がなぜか早々に脱落しかけ、寝起きやふとした時にどうして父がこの世にいないのか混乱することがあります。思い出すのは元気で穏やかな父の姿です。

同時に、最期まで生きることを諦めず果敢に病と向き合い 生ききったことや、最期の瞬間まで家族を慮る姿が心に深く刻まれており、筆舌し難いほど胸が締め付けられます。肉親でありながら本当にやさしく立派な最期でした。

あの7ヶ月間は私の人生において父からの最大の贈り物となりました。

きみもおとうさんまってたんだよね

少しずつ日常へ

介護や通院をもっとしたかったな、他にできることはなかったのかな、あの医療的な選択で本当によかったのだろうか、なぜ定期的な人間ドックで見つからなかったのか…今も逡巡し、ひたすら自分の中で咀嚼しているような感じです。(つまる話、おとうさんにあいたい、かえってきて、としか思えないのです)

一方で、日常を取り戻したくもあり、少しずつできることをはじめてみようと思い立ちました。

その一歩として、静かなこの場所で筆をとってみました。ここは誰かに見てもらいたい、リアクションを求めてというわけではなく、言語化することで自分と向き合う場所になればいいなぁ…と。

そして同じように苦しみ悩んでいる方がもしいらしたら…一瞬でも翼を休める止まり木になれたら嬉しいです。

まだふとしたことで感情が揺り動かされそうになりますのでゆっくりゆっくり…

SNSも定期的な訪問や投稿は少し難しそうなのでマイペースでいきたいと思います。(どうぞお付き合いはご無理のない範囲で…)

今この時も

末筆になりましたが、今この時も大切な人を支えている方がいらっしゃると思います。本当にご心配、ご心労のことと拝察します。

どうぞご無理はなさらないで。色んな手段を使ってご自身を労わっていただければと思います。

そしてできれば沢山手を握り、沢山動画を撮り、他愛のない会話を録音するといいかもしれません。最初に思い出せなくなるのは声みたいです。染み込んだ手のぬくもりは離れないようです。

皆さんが健やかでありますように。

心から願っております。

子犬のような雲 お父さんも今は自由に空を駆けているのかな

@meimeinonikki
しずかにつづる