国内旅行

melonica
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日本語の看板、理解できる文字がたしかに私が生まれる前から埃を被って並んでいる。車窓から見えるドアというドアが、そこで暮らす人々を前提にして流れていく。わたしがひとつの町の中を往復している間、この街の中も同じように人々がそこにそれぞれ在って動いているという事実に気を遠くする。旅をすることでしか気がつくことのない、いくつもの事実を肌で感じ、自然と踵が運ばれる。未だ触れたことのない太陽の成分。その土地にしかない味。そういうものを、たぶんずっと求めていたのだと思う。だから、わたしは旅が好きなのだ。

@melonica
短歌 エッセイ 北の生活