私にとってある種の文章を書くことは、職人技を要する作品を作るようなものであった。今日の恋人の誕生日のメッセージは久しぶりのその機会となった。
このちょっとした職人技をお教えしよう。
まず、頭の中に文章の核をイメージする。それは端的な言葉になったり、イメージとして思い浮かんだりする。この核がないと文章には成らない。今回は"生の祝福"であった。
次は、文章を書くところを用意する。デジタルなのか、アナログなのか。アナログなら、どのくらいの便箋なのか。今回は私の誕生日に恋人からいただいた万年筆で書きたかったので、アナログで、簡潔に伝えたかったので小さいメッセージカードを選んだ。
そうしたら、パソコンを準備して下書きを書く。冒頭から書いてみる。ポイントは思いついた言葉を辞書で調べて、類似語もあたることだ。そうすることで手癖で選んでしまう垢まみれな言葉を排して、本当に表現したいことを言葉にできる。言葉を選んだら、それが文章になるように順序を変えたり、付け足したりする。文章になったら、流れが生まれるようにさらに加筆、削除を繰り返す。そうしていくと核が文章となって表れる。この作業は彫刻のようで、すでにある核を余分なものを削ることで浮かび上がらせるようなイメージを持っている。
ここまでできたら、最後は清書として、メッセージカードに書いていく。書き始めたら流れを断ち切らないように最後まで書き切る。
これで完成だ。今年の誕生日祝いのメッセージはなかなか上出来で、我ながら気に入っている。私の言葉が遠くにいる恋人が少しでも護ってくれるようにと祈りを込めて送った。