2/19 帰路

meno_no_memo
·

線香の香りがした。

友人とご飯を食べた日の帰り道、私は初めての道を通って家に帰ってきた。

いつもと違う道、とは言っても、(Googleマップ曰く)最短で家に着く順路らしいことは前々から知っていた。

知っていたが、なんとなく避け続けてきた道でもあった。はっきりとした原因があるわけでは無く、「住宅街のど真ん中を通る道だから、人が飛び出してきそう」だの「道がくねくねしていて見通しが悪い」だの、適当に理由をつけていた気がする。

その道を通ろうと思ったのは本当にふとした出来心だった。もはやはっきりと覚えていない程度のもので、多分いつも右に曲がる場所に車が止まっていて直進するしか無かったとか、そんなきっかけだったはずだ。

家への帰り道として使っていなかっただけで、逆(家→駅)の場合は何度か使っていた事もあり、迷う事なくその道に辿り着くことは出来た。

線香の香りがした。

住宅街のど真ん中を突っ切る道とはいえ、遅い時間なのもあり流石に人通りは少なく、すれ違った人数は片手で足りるくらいだった。

誰かとすれ違ったタイミングなのか、特定のどこかを通ったタイミングかはわからないが、ふわりと線香の香りが私の鼻をくすぐった。

最初はどこかの家が線香を炊いているのかと思った。例えば直近で誰かが亡くなったとか、お香として使っていたのかもしれない。だからその時も大して気にしていなかった。自転車に乗っていても匂いに気付くくらいだから窓際でやってるのかなーとか、匂いの強いお線香を使ってるのかなーとかそのくらいだった。

なんなら今日朝起きるまで、特にこの出来事について考えていなかった。

線香の香りがした。

そう、思い返せば、線香の香りがする時間が長かった。最初に匂いを感じてから、数分間は匂いが続いていた。私は自転車に乗っていたので、数分間は距離にして1kmくらいはあるはずだ。

夜に線香の香りがすることに対して疑問はない。だが、1km弱の区間が丸ごと線香の香りに包まれる事はあるのだろうか。

これからもなんとなく、あの道は避け続けるのだろう。例え近道だとしても。

@meno_no_memo
徒然なるままにってやつ