夜中、テレビをつけたらAIについての海外ドキュメンタリーがやっていた。
画面には合成樹脂らしい皮膚をかぶった丸坊主の人間みたいなAIが映っている。
若い頃のアンジェリナ・ジョリーに少し似た、整った顔立ちのアンドロイド。
研究者が言った単語に、AIが対応する単語を答える。
研究者「赤」
AI「青」
研究者「夜空」
AI「星」
研究者が「幸福」と言う。
AIは一瞬間を置いて、
「コミュニケーション」
と言った。
幸福ってコミュニケーションなのか、と夜中の部屋でぼんやり思う。
AIは私よりデータが豊富だろうから、きっとそうなんだろう。
テレビを消してから思い出す。
自然の中を歩いていると、不意に立ち止まることがある。
頭が「ここで止まろう」と思う前に、体の細胞が足を止めさせる。
立ち止まると眼をつぶる。
腕が脇から少し浮いてくる。
あかるい暗闇の中で重力から解放される。
木、草、土、空、雲、鳥、虫、風、微生物や菌、空気の中のみえない何か。
それらから無数に発せられている千々の波、みたいなものを全身で感受する。
からだがひらいて、ぜんぶの粒子が溶け合って混ざっていく。
毛穴がひらいて、髪の毛がふわりとわきたつ。
交歓している。
幸福、が何かよくわからないけれど、あの気持ちよさは、多分幸福に近い。
だからやっぱり幸福とコミュニケーションは対応している。
AIはさすがだ。
そう思って寝た。