たまに「Tai chi」と検索して太極拳の動画を見る。
上手な人の、ゆったりとした絹のような、水のような動きは目を奪われる。
見た人からのコメントでは、そういう動きについてよく「graceful」と形容されている。
graceful。
graceには、「優美」とか「優雅」のほかに「恵み」や「恩寵」という意味もあって、人間の領域を超えた何かしらの純粋なエネルギーのようなもの、をたぶん指している。
太極拳でも他の舞踊や武道なんかの型でも、練り込まれた所作には確かにそういう雰囲気がある。
ただ視覚的に美しい、見て快い、というのではなくて、何かに丁寧に精神が込められたとき、人間が為したものであってもその周辺には神(のようなもの)がやどる。
そういうものはだいたい、静けさと美しさをともなっている。
gracefulというと、野生動物の堂々として静寂をたたえた存在感、とか、自然のあり方、みたいなものを思い浮かべるけれど、Tai chiを見ると人間もなかなかやるじゃん、とうっすら嬉しく思う。
人間だからこそできる神性(仏性でもなんでも)の顕現、というか。そういう可能性みたいなものを感じるのかもしれない。