本屋の「哲学・思想」の棚にある本の中で書かれているようなことを相手が言っているのならばまだしも、少し政権を批判したり、戦争や虐殺を咎めたり、それよりももっと身近なもの・ことに対する考えやこだわりにまで、「思想が強い(笑)」という一言を発せばなんとなく場がユーモラスになって納まる。とても便利なこの呪文が嫌いだ。つまりは話題に対して自分はそこまで考えていない、分からないというだけなのに、この言葉を発せばなんとなく相手の優位に立っている感じが出せる。「生きにくそう(笑)」とかも似ていると思う。相手の一方的な捲し立てに返すのならまだしも、コミュニケーションの中でのちょっとした自己の吐露に対してこんな言葉を返す人には一生心を開きたくない。頭を使う気がないのにマウントだけ取って来ようとする人とは、関わるだけ無駄だ。
そもそも思想が強くてなにがそんなに面白いのか分からない。いい大人なら自分の思想くらい持ち合わせていて当然だろう。結局、出る杭は打つ集団主義の思想が強いだけなのだと思う。本当は考えを持っていないのではなくて「思想が強い(笑)」と揶揄ったその思想とは反対の思想を無意識に強く崇拝しているのではないか。