ノック・ノック

metayuki
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怖い話、というほどではないけれど、怖い話に属するかもしれないので、そういうのが苦手な方はご注意ください。

実家で僕の部屋は二階にあり、六畳の部屋に狭い納戸もくっついていた。いつからだったか、納戸の床で音が鳴るようになった。板敷きの床で、あれこれと荷物や棚が置かれていたので足の踏み場はほとんどなかったのだけど、そのむきだしの床のあたりで、硬いボールが跳ねるような、とん、とん、とん、とん、と断続的な音が鳴るのだ。ピンポン玉が跳ねるのに近いけれど、もうすこし硬いというか、重いというか。とん、とん、とん、とん、と鳴りはじめると一定のリズムでしばらくのあいだ鳴り続ける。で、いつのまにか止んでいる。

それは家鳴りというものでね、と言われるかもしれないし、そうかもしれないと僕も思っている。でも、不思議なもので、その音にだんだんと愛着のようなものが湧いてきた。

最初はボールが跳ねる音だと認識していたものが、あるとき、自分で床をノックしてみると、それに近い音に聞こえた。すると、その音に意味があるように思えてきた。

実家に暮らしていた十代の半ばから後半あたり、昼寝をするとよく金縛りにあった。夢と現の境目がわからなくなり、おそらくは夢の側で真っ黒な人物を見ることもあった。見る、というか、見られていた。金縛りにあっている僕の枕元に座って、じっとこちらを覗いているのだ。ホラーが好きだったので、その手のイメージはしっかりと頭に植えつけられていたから、まあ、夢だろう。汗びっしょりで目が覚めて、呼吸も乱れた状態で体を起こした。夢だ夢だと思っても、目が覚めた直後はまあまあ怖かった。それにくらべれば、床で鳴る音はかわいいものだった。

一階にいるとき、二階の僕の部屋でとん、とん、とん、とん、と鳴るのが聞こえてくることもあった。ああ、また鳴ってる、と思った。

映画『インターステラー』を観て、実家で聞いていたあの音を思い出した。なにかのメッセージかもしれない。でも音はいつも等間隔で鳴って、モールス信号ではなかった。僕が無知なだけで、なにかの信号だったのかもしれない。だとしたらあの音に申し訳ないことをした。

@metayuki
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