問題をつくる

metayuki
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学習塾のテスト問題をつくる、というアルバイトを一度だけやったことがある。そんなのアルバイトに発注するのか、と当時も仰天したものだけれど、いま思い返してみても驚く。ひょっとして違法だったんじゃないかとすら思う。ねえ、もうここに書いても時効だよね、と、その仕事を紹介してくれた友人に確かめたいが、連絡先が手元にない。

大学生のときだ。高校時代の友人から「テスト問題つくるバイトやらない? 国語、得意でしょ」と連絡をもらった。そんなふうに、たまにバイト情報をくれる友人だった。いちばんまともな誘いはコンビニバイト。ちょっとおもしろかったのは、日雇いで駐車場の案内係をやるというもの。で、テスト作成。その塾で講師をやってるとかならまだしも、ぜんぜんそんなつながりもなく、どういうルートで来たのか、中学生向けの国語の問題をつくってほしいというものだった。小説でもエッセイでも好きな作品を使って、その一部を抜粋して、指定の数の設問を用意せよ、というのが依頼というか、指示というか。

実家をひっくりかえせばその問題が出てくるかもしれないけれど、友人の連絡先同様、僕の手元には残っていない。もう、誰の何という作品を使ったのかもおぼえていない。記憶しているのは、中学生向けの問題集を買いに書店へ赴いたこと。いくつか確認して、問題のつくりかたについて、だいたいの感覚をつかんだつもりになり、自宅でせっせと問題作成に励んだ。こんな素人がつくった問題で学力を測られてしまう中学生たちに申し訳なさを抱きつつ、けっこう楽しんで作った。なかなか良い問題になった(自賛)。

すんなりと受理されて、バイト代も受け取った。ちなみに僕に声をかけてくれた友人も、別の教科の問題を作っているというような話だった。大丈夫か、その塾? バイト代を支払ってもらえたので、きっと、大丈夫なんだろう。僕は友人を介してすべてのやりとりを完了させていたので、実際、それがどこにあるなんという塾なのかもわからないままだった。ということはつまり、実在するかどうかも不明ということだ。え、じゃあ、実在しないとしたら、なんのためにそんな問題をつくったりしたのか。友人が僕にいたずらを仕掛けた、とか。でもそんな種明かしはなかった。

考えられる可能性としては、実はそれは「よい問題を作成する技能を持った人間=設問者」を探すための試験で、問題をつくっているつもりが、試験を受けていたのだ、というもの。スパイものみたいだ。優秀な設問者は政府からスカウトされ、敵国の知能を下げるため偽問題を作っては送り込み、作っては送り込み、相手の国力をじわりじわりと引きずりおろしていくのだ。

そんなわけはない。

問題作成のバイトは一度きりだった。僕は試験にパスしなかったということなのかもしれない。

@metayuki
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