夢で会ったから

metayuki
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有名な政治家が夢に登場した。僕はその人物と面会の予定があって、ほかにも幾人かが集う部屋で向かい合って言葉をかわした。そこで目が覚めた。妻に夢の内容を話して聞かせると、「寝る前にあんなニュースみたから」といわれ、たしかにそうだ、と納得したところで目が覚めた。妻との会話まで含めて夢だった。

夢に有名人が登場することはほとんどない。まず、ない、と言ってもいい。記憶にないだけかもしれないけれど、おぼえてない夢は見てないものとしてカウントしていいだろう。

学生のころ、何人かの大人たちから、会いたい人には会いに行ったほうがいい、と言われた。強烈に会いたいと願う人もいなかったので、それを実践することはなかったけれど、就職してからも同様の言葉をかけられることはあって、広告業界で有名な人たちにはちょっと会ってみたい気がしたけれど、訪ねていくことはなかった。好きだった人が実際に会ってみると好きじゃない人になった、という経験のほうが現実には起きていて、まあ、そんなもんかと納得したりした。

で、歳を重ねたいまは、若かった僕にその手の言葉をかけてくれた人の気持もわかるようになった。会えるかどうかというのはたいした問題じゃなくて、行き先を持つことが大事、という話だろう。相手が人じゃなくてもいいのだ。好きな絵画でも景色でもなんでも。

僕はターナーの絵が好きで、ロンドンのナショナル・ギャラリーを訪れたときにずっとターナーの作品の前にいた。ああ、それって「フランダースの犬」みたいなものか。人生の目的とか言うとおもすぎるけど、人生においてはいつも行き先を持っているほうがいい。「会いたい人には会いに行ったほうがいい」とアドバイスしてくれた人たちは、思い返してみれば、みんな、動く人だった。なるほどな。

さて。夢に出てきた政治家については、とくに好きでも嫌いでもなく、特別に意識いたこともないのだけれど、これもなにかの縁かもしれない。どこかで会えそうな機会があったら近づいてみたい気もする。とりあえず最初の語りかけは「前に夢に出てきたことがあるんですよ」だ。気持ち悪いやつだな、と思われるだろうけど、まあ、それでいい。

@metayuki
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