そんな人に見えない問題

metayuki
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もうすこしで詐欺師と仕事をするところだった、というような顛末を聞いた。ネットでその人物の名前を検索すると20年近く前からあれやこれやで訴えられているといった情報が見つかり、それでもまだ現役で詐欺まがいのことをやっているというのだから、なんともはや。

何年か前にも、というのはコロナ前だったから5年ほど前のことか、詐欺まがいの人とニアミスしたことがあった。仕事の案件でシステム導入を検討しているときに誰かの紹介で登場した人物が、あとで調べてみたら投資関連の事件で訴えられている、といったような話だ。それとはまた別の話で、仕事でつながりのある人がスマホの契約についてのお得情報を持ってきて、いやそれマルチビジネスでしょ、と思って調べたらやっぱりそうだった、ということもある。なんも珍しい話じゃないのだ、きっと。

東京で働いていたときに、美魔女(という言葉も聞かなくなって久しい)とビジネスマン(という呼称ももう通用しないかもしれない)という二人一組のクライアントを担当したことがある。あれも、どういうつながりで舞い込んだ仕事だったのか、よくわからない。メイク関連の広告をつくるというので僕がコピーライターとして、女性のアートディレクターといっしょに打ち合わせに参じた。クライアントは四十代半ばとおぼしき女性と、その秘書的な立場の五十前後の男性だった。女性は派手な顔立ちにメイクに服装で、男性の方は紺のピンストライプの細身のスーツにアタッシュケースを肌見放さず持っている。B級のスパイ映画に登場する女ボスと腹心の部下というビジュアルだった。打ち合わせでは女性が主に話し、男性はじっと黙って控えている。アタッシュケースは一度もひらかれないままだった。何度か打ち合わせを重ねて広告をつくり、当時、女性誌に掲載もされた。実際に掲載されるまでは、ほんとにあの人たちはこの商品を売っているのだろうか、という疑いを拭えなかったし、広告が掲載されてからも僕は個人的に、あの人たちはやはりスパイだったのではないか、という妄想を楽しんでいた。広告に書いた文言が、僕の知らぬ間に暗号として機能しているんじゃないか、とか、支給された写真に隠された意味があるのでは、とか。

詐欺まがいの人物と接触した人に話を聞くと、誠実そうな人だった、とか、調子のいい人だった、といったコメントが多い。多い、と断言できるほどサンプルがあるわけじゃないけれど、僕の知る限り、そんな印象。でも、誠実そうな人が本当に誠実である可能性だって高いし、調子のいい人なんていくらでもいるから、それらを根拠に相手を疑うことはできない。

お金が絡むときには慎重になる、くらいしか、対策もないのかもしれない。

@metayuki
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