お世話になった方が体調を悪くしていると聞いた。そんな話題が珍しくもなくなってきているこのごろ。そしてこの先もっと、この傾向は強まっていくはずで、春なのに、と思ってしまうものの、季節は人の都合にあわせてはくれない。
漫画『寄生獣』を最初に読んだのは高校生のころだったか。『ベルセルク』と『寄生獣』がクラスの男子のなかで双璧な存在だったように思う。どちらも僕は借りて読んだ。
『寄生獣』でいちばんつよくおぼえているのは、主人公がとつぜんもりもりとご飯を食べはじめたのを見て、母親が「この子、太るのかしら」と考える場面。なんでそこ? ほかにもっとたくさん印象的なシーンとか台詞とかあるだろう。そのとおり。ほかにたくさんある。でも、ずっと、ずっと、そこが残っている。
理屈としては、作品を読まれた方はご存知かと思うけど、そのあとに母親を待つ運命を知ってしまうと、こういったなにげない日常の断片が遡って意味を持つ、ということかもしれない。
最初に書いた「体調を悪くしている」方について考えると、なんでか、星野源の歌詞について会話したことを思い出す。その方は僕の親と同世代で、最近の歌については明るくない。なのにどうして星野源の書く歌詞について話したのか、そこまでの経緯も忘却の排水口に流れてしまっている。
何年も経ったあとで、その人について思い返すときも僕はまた歌詞の話題に心を遡らせることになるのだろう。