おぼえきれない

metayuki
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バスに乗っていて、隣の車線を走る車を眺めていたときに、ふと思い出した。昔はぜんぜん車種をおぼえられなかった。

小学生のころ、男子の多くは、そのへんを走っている車を見て名前を口にした。スカイラインとかカローラとかなんとかかんとか。僕はさっぱり駄目だった。ホンダのシティくらい特徴があれば、そしてコマーシャルのインパクトもあれば、さすがにわかった、と言いたいところだけれど、街なかを走っている姿を見て「シティ!」と言い当てたりはできなかっただろう。

どうしておぼえられないのか、と子供ながらに疑問に思ったけど、単に興味が持てなかったからだろう。でもな、遠足のときなんかにまわりの連中がいとも簡単に車の名前を言い当てていくと、情けない気持ちになった。

道路の名前もぜんぜんおぼえられない。福岡には「国体道路」とか「福博通り」みたいな道があるようだけど、「だいたいあのへんの大きな通り」という程度にしか認識できていない。これはいかん、さすがに困る、と思って暗記しようと努力しても、ほどなく忘れていく。なんでや。あんた、なんでや。と、なぜか関西弁で顔を真赤にして自分を二人称で責めたくなる。よくわからない衝動。

中高生のころに困ったのは、高校を制服で識別できないことだった。特に女子の制服。高校生男子のあいだでは「どこの女子の制服がかわいいか」といった話題が定期的に持ち上がる。友人たちと街なかを歩いているときに、「いまの○○高校の子がかわいかった」などという意見が飛び交うこともある。で、そのたびに僕は間抜けヅラをさらすことになる。どうしてみんな、どの制服がどこの高校か見分けられるんだ? そりゃデザインが違うから。これもがんばっておぼえようとした(なんでや)けど、おぼえきれなかった。

車も、道路も、制服も、興味がないといってしまえばそれだけのことなんだけど、まわりの人たちはみんなホホイとおぼえてしまえるようなので、真剣に悩んだ。なんなら道の名前については上に書いたとおり、いまも困っている。いや、嘘だ、そんなに困っていない。ただ恥をかかないか不安なだけで、スマホのおかげで道についてはどうとでもなっている。

そんなわけで、バスから車を見ていても、車種についてなにか考えることはない。ナンバープレートの数字を言葉に置き換えるならなにかな、とか想像するばかりで、今日は「10-91」を見た。入れ食いだよ。手ぬぐい、でもいいかな。天狗ワン、とかもいける。なに「天狗ワン」って。天狗界の王者を決める大会だよ。

@metayuki
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