「ちゃん」までが名前です

metayuki
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日中、子供たちが学校に行っているあいだはリビングのクーラーをつけずに窓をあけっぱなしにしている。風が吹いている日はまだいいのだけれど、そうでなければ普通に暑い。酷暑、という文字が壁に大きく書かれている気分だ。

昨年の春まで我が家にはハムスターが暮らしていた。我々はハムスターとともに暮らしていた、と言い直したい。

コロナ禍で迎えた最初の夏に、家族でペットショップへ出向いて、連れ帰ってきた子だった。7月11日が誕生日だというので、セブンイレブンだね、という会話から、「ぶんちゃん」と命名した。そういえば先日観た『古畑任三郎』第一話の前口上は「えー、犬の名前を呼ぶときには『ちゃん』をつけないでください。◯◯ちゃん、◯◯ちゃん、と呼んでいると、犬は『ちゃん』までが自分の名前だと思いこんでしまいます」といった内容だった。「ぶんちゃん」は「ちゃん」までが名前だった。

暮らしはじめたのが夏だったので、クーラーのついている日々だった。子供たちも夏休みだし、そんなに外出もできないし、ということで日がな一日、冷房を効かせていた。時が流れ、緊急事態宣言もなく、オンライン授業もない夏が来て、そうするとぶんちゃんのためだけに冷房をつけておく必要が出てきた。家に誰もいないときでもぶんちゃんのために部屋を暑くさせない、という確固たる決意のもとで我々は行動した。

犬猫のいる家庭ではあたりまえに終日冷房と聞いていた。ハムスターでも同じことだった。僕か妻が自宅で仕事しているあいだは、仕事部屋のクーラーをつけているので、ぶんちゃんの住まいを仕事部屋まで移動させ、狭い部屋で肩寄せ合って冷気を吸って吐いてしていた。

今日、くそあついリビングに行ったとき、ふと、ぶんちゃんの住まいが置かれていたあたりを見て、あ、もう冷房つけておかなくていいんだ、と思い出した。

もうすぐぶんちゃんの誕生日が来る。

@metayuki
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