夏が来る

metayuki
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まだ日傘を買っていない。

街なかを歩いているときに、ちらほらと、日傘をひろげている男性を見かけるようになったので、失礼にならないようにと思いながら、遠目に、どんな人なのか観察してしまう。サンプルが少ないから全体的な傾向などわからない。僕の視界に入るのは、なんというか、仕事を定時できりあげそうな男性ばかり、という印象である。そんなこたあないかもしれないけど。

ところで僕は仕事を定時で切り上げるのが苦手だ。長らくフリーランスで動いているので、いまも「苦手」かどうかはわからないものの、会社員時代は定時で帰るなんて稀もいいところだった。

たまに食事する友人がいて、定時で帰るのがあたりまえの生き方をしていたから、僕が残業あたりまえの世界だと訴えると「ぜんぜん想像できない」と驚かれた。呆れられた、のかもしれない。

などという話はこれまでにもさんざんしてきたし、ここでも似た話題を書いたような気がするので、ここへんでやめておこう。

なぜ日傘をさす男性と、定時できりあげる人物とが結びつくのかといえば、他人の目など気にせず、自分が適切と思う行動をきちんと採択できるから、というあたりだろうか。自律ができているということならば「目覚ましより早く目を覚ましそう」でもいいし、「忙しいときは期日前投票に足を運びそう」でもいいわけだ。でもそうは思わなかった。なぜか。「人の目」が絡んでくるから、ということだろう。目覚めも投票も人の目を気にして行うものではない。じゃあなにか「財布拾ったら交番に届けそう」はありなのか? いや、それも違う気がする。「財布拾ったら交番に届けそう」は、たしかに人目を気にする事態なのかもしれないが、日傘をひろげる男性たちはそもそも「交番に届けるかどうか」なんてことは考えもしないだろう。

俺はなにを書いているのだ。

自分の比喩が正しいぜ、なんてことを言いたいわけではない。そもそも定時で帰ってるかどうかもわからない、勝手な妄想なのだし。

などなど考えるうちに、自分が日傘をさしていたら、周りの人たちはどんなふうに思うのだろうか、ということが気になってきた。

どんなふうにも思いませんよ。

そりゃそうだ。僕だって自分が日傘を買うぞと思ってなけりゃ、ここまで他人を観察なんてしなかった。

いいから買え。買って、使え。夏が来るぞ。

@metayuki
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