荷台の風

metayuki
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今年の正月もお餅とみかんをそれなりに食べた。「食べたなあ」と実感するほどではなくて、「うん、食べた食べた」という程度。それが歳のためなのか、時代なのか、わからない。昔はお餅とみかんは延々と出てくる印象だった。

母方の祖父母の家では毎年自宅で餅をついていたので、食べ放題みたいなものだった。鹿児島だったので、みかんよりはぽんかんを多く食べていた。餅は醤油と海苔で食べるのが最高で、きなことかあんこなどの甘い系は苦手だった。

小学生のころ、剣道部に所属していたことがあり、毎年、鏡割りのイベントが行われていた。くそさむい体育館に朝から集い、剣道着に着替えて裸足のまま雑巾がけを行う。大人たちは火のまわりにあつまってぬくぬくしながらぜんざいをつくっていた。このイベントが大嫌いで、ぜんざいだって食べたくはないし、冷たいなか掃除をするというのも楽しくはなかった。でも、食べないわけにはいかないので、がんばって飲み込んだ。

剣道部にはいい思い出があまりなくて、だけどひとつ年下のT君のお父さんがトラックの荷台に僕らを乗せてくれたのは嬉しい経験として記憶に残っている。

確か白の2tトラックで、幌もなにもついていないタイプのものだ。どこかで試合が開催された、その帰りにT君のお父さんが数名の男子を乗せてくれた。堂々と公道を走って帰ったので、違法ではなかったのかと思うけれど、どうだろう。実際には違法だけど、厳しく取り締まったりはされなかったということだろうか。まあ、そんな懸念も「いまにして思えば」であって、当時はまったくもってそんな不安はなかった。夕暮れ時、からっぽの荷台に友人たちと乗って、自然のそれとは違った流れ方をする風の変化を感じながら、ずっと笑っていた。夏のことだった。

@metayuki
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