はなたかだか

metayuki
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下の子の乳歯が欠けて、ぐらついていたこともあり、かかりつけの歯医者に連絡して処置をお願いした。あっさりと乳歯は抜けた。

僕はほとんど虫歯にならず、そして乳歯たちがしぶとかったので、小学生も高学年のころに「もう抜いてしまおう」と歯科医に促され、ぐらついてもいない歯を抜こうとされたことがある。結局、そのときには抜けなかったのだけど、麻酔を打って、ペンチのような器具でぐりぐりとやられたうえで「抜けない」と言われたこちらの身にもなってほしい。などという感想は、あとになって言えるようになったのであって、当時はおそらく「ふふん、どうだい俺の歯、頑丈だろう」くらいに鼻高々だった気もする。

鼻炎持ちだったので、小学生のころには歯医者よりも耳鼻科によく行っていた。鼻の通りをよくするためだったのか、鼻の穴に器具をつっこんで蒸気といっしょに薬を吸入された。おなじく鼻炎持ちの患者たちが壁に向かって横一列に並んで、しゅうしゅうと音を立ててのぼってくる蒸気薬を鼻から吸っている様はなにかの実験を思わせた。よくなったかといえば、そんなこともない。鼻のことで鼻高々になった経験は、そういえばない。

僕はまつげが長くて上向きなので、幼いころからそこはよく褒めてもらえたのだけれど、これについても鼻高々、とはならなかった。素直にありがとうございますと御礼を言うくらいでせいいっぱいで、まつげが長いからといって得したことはない。そもそも男にこのまつげは無駄ではないかと思っていたくらいだ。いまだったら違ったろうか。男性もメイクをしてみむとてするなりな時代だから、上向き長めまつげもメリットがあるかもしれない。だとしても、いまさら手遅れではありますが。

ところで「今日はきっと歯を抜かれる、麻酔されて痛い思いもするだろう」という覚悟で歯医者に向かった我が子は、痛みもなにもほとんど感じないうちにするっと歯を抜いてもらったので、処置が終わったあと、実に鼻高々な表情を見せた。

@metayuki
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