昨日は83本目で「闇」について書いたから、今日は84本目で「ヤシ」について書くのだろうか。でもヤシについて書けることなんてあるだろうか。ありました。ヤシの木にまつわる思い出。というか、またもゲームにまつわる思い出であります。
その昔、ファミコンで『高橋名人の冒険島』というゲームが発売された。調べたところ1986年のことらしい。実はこのゲームはもともと別の名前で、アーケードゲーム、つまりゲームセンターなどで遊ぶものとして存在していた。『ワンダーボーイ』という。高橋名人とは関係のない主人公で、ファミコンに移植される際にあれこれ変更があった。のちに『冒険島』の方をベースにしたアニメ『Bugってハニー』も放送されるなどしたけど、そっち方面にたいした思い出はない。『ワンダーボーイ』だ、僕がおぼえているのは。
鹿児島県は鹿屋市に父方の祖父母宅があり、夏休みは毎年そこで過ごした。同年代のいとこたちも集まって、親戚というよりは友人たちみたいな空気感のなか、文字どおり、朝から晩までくたくたになるまで遊んで、くたくたになってもまだ遊んでいた。坂道の途中に位置していた祖父母宅は、どこへ行くにも険しい道のりで、だけど僕らはあちこちへ出かけていった。そのうちのひとつに、タイヨーのゲーセンがあった。タイヨーというのはスーパーとデパートの中間みたいな商業施設で、最上階にちいさなゲームセンター(ゲームコーナー、くらいの規模かもしれない)があった。
お金なんてろくになかったので、実際に100円玉を入れてゲームをプレイすることもあまりなかった。ファミスタみたいな野球ゲームがあって、それなら100円で確実に3回裏まで遊べるぞ、という打算で、たいして好きではない野球ゲームを選んだりしていた。あるとき、『ワンダーボーイ』が導入され、そのデモ画面を食い入るように僕は見ていた。『ワンダーボーイ』は『スーパーマリオブラザーズ』的な、横スクロールタイプのアクションゲームで、主人公がスケボーに乗ってすいすいぐんぐん進んでいくスピード感に魅了された。しかし、僕はアクションが得意なわけではない。なけなしの100円をそこに突っ込む勇気もない。ものの数秒で終わる可能性のほうが高いだろう。でも楽しそうだ。森の中を駆け抜けたと思ったら、雲に乗っかって海の上をすいすいと渡っていき、あっという間に南の島みたいなステージに行き着くデモ画面。ヤシの木が並ぶ世界をスケボーで滑り抜けていく、楽しそう!
誘惑に負けて100円を投入し、あっというまにゲームオーバーとなった。ほら見たことか。
夏休みということも手伝ってなのか、スケボーとヤシの木の組み合わせが魅力的に映った。遊んだ時間よりデモ画面を眺めていた時間が長いゲームなんて、あとにもさきにも『ワンダーボーイ』だけだろう。
のちに『高橋名人の冒険島』として発売されたゲームを見て、「あのゲームだ!」と高揚したものの、実際に遊んでみてもあまり楽しくなかった。あるよね、そういうこと。
いとこたちと過ごした夏。ひとつの部屋を布団で埋め尽くして、雑魚寝した夏。家に帰っても友達がずっといっしょにいてくれるような夏。そういった記憶と結びついてくれなくちゃ、ただのゲームでしかないのだ。
などと偉そうに語っているけれど、「ヤシ」ということを考えなければ思い出すこともなかっただろう『ワンダーボーイ』。でも思い出したらちゃんと大切な思い出のままだった。
明日は85本目で「ヤゴ」について書くのか、いやそんな決まりはないだろう。でも「ヤゴ」と書いて思い出したことを今日のうちに書いておく。
「ヤゴ」で蘇るのは、岡田あーみんの漫画『お父さんは心配症』で、お父さんが歌っていた「ヤゴヤゴヤーゴの子守唄」である。姉が購読していた『りぼん』で読んだのだけど、インパクトがあったのか、すごくおぼえている。なんならメロディまでおぼえているのだけど、当然、漫画に描かれたひとこまなので音が聴こえるはずもなく。なんでメロディまで記憶してるんだろ、自分で勝手に作曲したのかな、と疑問に思い検索してみたら、これも元ネタがあったそうで、えー、でもその元ネタ知らないや。
ちょっと待て、これ、この調子でいくと、ここまでの倍の文量書くことになるだろ。というわけで、本日はこれにて。