呼び止められたい

metayuki
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ここ数日、仕事面で予想外の動きが多くて、今日も10月のスケジュールなど出てきて、いやまだヨクワカラナイデスケド……、と思考がスロウダウンしていった。まだ1月なもので、こりゃ今年はこういう運勢なのかな、などと考えてみたりして、そういや今年のおみくじなんだったけ、と振り返ってみたけど、思い出せなかった。中吉だったか、小吉だったか。大吉じゃなかったことはおぼえいるけれど、あとはすっかりどこかへ行った。さようなら、僕のおみくじ、我が運勢。

もう十年以上前になる。友人に教えてもらった占い師に占ってもらった。事前にメールで情報を送っておいて、占い師の部屋を訪ねていって、運勢をみてもらう。そういう流れだった。当然、有料。そこで言われたことのいくつかは、いまでもおぼえている。占いで言われたとおりになったかといえば、そんなこともない。でも、まあ、未来予測というのではなくて、自分がいま立っている足元をどうやって捉えるか、その点をしっかりと教わった。

どこに立って、どちらを向いているか。

それがわかれば、自ずと進む方向は見えてくるし、進む方向がわかっていれば、その道の先がどういった未来になるかの予測も立てられる。

案外、理にかなった提言なのだな。

夢枕獏の『キマイラ・吼』シリーズが好きだった。とつぜんの話題転換。いや、いまも好きだ。待て、好きだという話ではない。竜眼の話をしたい。主人公のひとりである少年に向かって、ある人物が「お主、竜眼の持ち主じゃな」的なことをいう場面があってだね、竜眼とは要するに特別な人物であることを指していたわけで、中学生だった僕はそういったことに憧れた。恥を忍んで言ってしまおう。占い師がテーブルを置いている前を通りかかったとき「あんた、竜眼の持ち主だね」と声をかけられないかと夢想していた。竜眼じゃなくてもいいです。「ちょっと待ちなさい、きみ、きみにはなんとかかんとかがどうのこうので」とかでもいい。とにかく呼び止められたかった。占い屋の前を通るたびどきどきした。なにこの胸のときめき。

呼び止められなくてよかった。いいカモでしかない。

以前、いっしょに仕事してた女性が「私、龍神に守られてるんですよ」と言っていた。うらやましかった。誰か俺にも教えてくれないかな。「お主、神を背負うておるな」とか。(この手の夢想は登場人物の語り口調がいちいちキャラっぽくなるのなんでだろう)

もしもいま占い師にとつぜん呼び止められて、驚愕のひとことを告げられるとしたら、なにがいいだろう。いまさら竜眼の持ち主とか言われても冒険の旅に出るの躊躇しそうだし。龍神は、その人とかぶっちゃうし。前世のこととかかな。なんだったら驚くだろう。

「きみ! きみは前世もきみだったよ!」

とか言ってくる占い師がいたら、いろんな意味で驚くな。でも嫌いじゃない。

@metayuki
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