洋服屋のレジで支払いを済ませようとしたときに、「アプリをインストールしていただいたら本日のお買い物が1,000円引きになります」と言われ、あまり買うことはないけれど好きなお店だったので、ふたつ返事でアプリを入れた。個人情報の登録まで終えたらようやく1,000円オフ、とのことだったので粛々と入力していったのだけど、その手の動作にも慣れたもので、細かく見ていかなくてもだいたいわかるわ、という勢いで必要事項を埋めていき、さっさと登録ボタンをタップした。した瞬間、あ、と思った。画面の端に「性別」の項目が見えていて、その並びが「□女性 □男性 □どちらでもない」になっており、「□女性」にチェックが入っていた。
「あ！」と思っただけじゃなく声をあげてしまったので、店員さんも「どうされました？」と不安そうに聞いてきた。
「すみません、性別、女で登録しちゃいました」
「でしたらここをタップして……」
指示に従って前の画面に戻り、性別を男に変更して、修正登録を行い、無事1,000円オフの恩恵を受けることができた。
どうして「女性」にチェックを入れたのか。最初に置かれた項目が「男性」という思い込みがあったからだ。そのショップはメンズも扱っており、アイテムの割合は男女で半々だろう。だから僕は勘違いした。当然、選択肢の最初が「男性」だろう、と。
そういうところですよ、とあちこちから指摘の声が聞こえてきそうだ。男性優位な社会を当然と思っているから、最初の選択肢が「男性」であるはずと思いこんでいましたね、あなた。と問われたら、返す言葉もない。
登録内容が間違っていたからといって、それがおおきな問題になるでもなく、こんなのは些末なできごとと割り切ってしまってもいいのだけれど、でも、世の中で問題になっているあれこれは、こういったことを「些末と処理する姿勢」から生まれたものなのだと言われれば、そんな気もしてくる。反省。
みんながみんな声をそろえて「それは些末だね！」と断言できることだって、世の中にはきっとひとつもなくて、些末、と考えてしまったときは自分を省みるくらいがいいのかもしれない。
しかるに、僕にとってアプリのインストールと情報提供は、1,000円オフのためなら「些末」な行為ということなのだろう。うむむ。些末なんて思ったことないけどな。好きなショップだからなんだけどな。そう考えると断言できることなんてなにもないな。