小学生のスポーツチームを取材する、という仕事をけっこう長いこと続けていて、その仕事のおかげで県内のあちこちを訪ねる機会に恵まれる。あとちょっとで隣県、という土地を訪ねることもあり、この仕事がなければ訪れなかっただろうと思うこともしばしばで、実に興味深い。
最近はほとんど車で現場へ直行しているものの、案件が始まった当初は、できるだけ公共交通機関を使って取材に向かった。電車からローカル線に乗り換え、その先でさらにバスを使うとか、最寄駅から20分くらい歩いていくとか、それはそれで楽しかった。取材対象はスポーツチームで、競技は様々。野球、サッカーが多くて、ドッジボールとかラグビーとかチアとか空手、剣道、柔道、テコンドーやアイスホッケーなどなど、なかにはまったくルールがわからない競技もあり、指導者の皆さんにその場で簡単にレクチャーしていただくこともある。
公共交通機関を使っての移動の際には、その土地の空気感をつかむことにも注力した。あくまでも「チーム」の取材であり紹介記事になるので、子供たちに個別に話を聞くことはしない。とはいえチームの雰囲気を知るためには、練習している光景だけじゃなく、子供たちの日常がどういった環境下にあるのかも知っておきたかった。現地に到着するまでの道のりでおおまかな空気を把握して取材に臨むと、気のせいかもしれないけれど、子供たちがどんな姿勢でスポーツに取り組んでいるのか、より深いところでわかるようになる。ネットのおかげで情報の摂取量に関する格差は縮まったかもしれないけれど、だからといってどの土地でも同じふうに子供たちが育つというわけではない。そのことをまざまざと思い知らされたりもする。
ああ、いやいや、田舎の子が素直とかそういう話じゃない。そうではなくて、子供同士のつながりでなにが重視されているのか、保護者たちがどんな気持ちを託して子供たちをそこに参加させているのか、それが土地の性質とどの程度まで関係しているのか。そういったことがわかる、という話だ。ま、勝手に推測しているだけなので、実際のところどうなのかはわからないし、記事を起こすにあたってそこまでディープなことを書く余裕もない(紙幅的に)。
家族で会話しているとき、自分と妻の幼少期の違いが浮き彫りになることがある。よくある。年齢も近いので、重なる情報(流行歌とか)も多々あるものの、土地が違うぶんだけの差も少なくなくて、そういうのを知るたびにおもしろいなと思う。原風景、なんて言うと大袈裟な響きになるけれど、やはり、どうしたって、子供のころの景色や経験はその人の歴史であり文化の芯を形成するのだから、どんなところに暮らしているのかを知ることは、ライターとしてとてもたいせつだと思う次第です。