【感想】kouri(2022)『Ib』

meteo21
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2024.2.20 ホラーゲーム(?)『Ib』をプレイしました!

2024.2.26 追記・校正

きっかけなど

 結構前から存在は知っていたし、友人たちの(リアル)ゲルテナ展についてのツイートも見ていましたが、中々手を出す機会がないままでした。たまたまパラレルで「春休みにやろうと思ってるんだよね」「配信してくれたら見るよ」といった会話(なお、この時の私はマジで知らなかったので「アイビー」と呼んで複数人から指摘されました)がなければ今も先延ばしにしていたと思います。ありがとう笑 名作は食わず嫌いするものじゃないですね、あとノリのいい友人の存在は偉大です。

 ホラーゲーム、癖のある絵柄などで遠ざけている仲間へ、操作は結構簡単だし名作と言われるだけのことはあるので是非やってみてください、あわよくば配信してください見守ります。今ならなんと30%オフ!

感想

⚠️ここからはストーリーのネタバレが含まれます。

 ざっとした感想としては、世界観やストーリーが作りこまれていて、ゲーム(ギミック)やホラー要素が程よく、評判通りに完成度が高くて遊び心地の良いゲームだったと思います。

漏れ聞こえてくるIbの評判でよく聞くのは世界観の作りこみだったのですが、これは確かにその通りで、おかしな美術館を探索するという設定や、併せてBGMもすごく良かったです。特にBGMはストーリーやキャラクターを通じて愛着が出てきました。今も実はBGM流しながら作業してます。特に、キャラクターが本当に魅力的で……これは後述します。

個人的にはゲーム的な側面、つまりギミックやホラー要素もかなり好きでした。こちらは初公開がかなり前で、ドット絵フリーゲームということで正直かなり舐めてました。それはもう、ストーリーが面白いのかな~ということにしか気が向いてなかった。ゲルテナの作品群を使った謎解きは簡単すぎず、かといって行き詰まるほどの難しさでもなく正直とても楽しかったです!パズル的な要素はちょっとゼルダの伝説みたいだなと思ったりもしました。

それから、随所で挟まれるちょっとしたジャンプスケアやホラーも、ちゃんと悲鳴を上げるくらいには怖いけど、日常に持ち越すほどではない、本当にちょうど良い怖さだったので遊んでいて心地良さを感じました。ホラー要素で特に好きだったのは女の絵に追いかけられる展開かな……「焦る」ってホラーゲームの楽しさの一つだと思います。その点でギャリーの脱出イベントも好きです。あと、惰性でエンターを押し続けていると、アカン方の選択肢に行ってしまうの面白いですよね。私は鏡に出現したマネキンを壊しました。

とはいえ、何よりストーリーが面白いからゲームを先に進めたくなっていたので、スト―リーや、キャラたち、特にギャリーさんの魅力なしに語ることはできないですね。

誰を信じれば良いのか

 1周目の純粋に何もわからない状態で進めていた時のストーリーの一番の楽しみは、「誰を信じれば良いのか」が変わっていくことでした。実は、ギャリーの存在をマジで知らなかったんです…未プレイの人でも知ってるくらい有名なんですって?インターネット廃人にあるまじき失態!

そういうわけなので、美術館にいたことが確定していても、急に現れた(出会い頭では)頼りなさそうな人物がどうにも信用できなくて。ついでにCCさくらみたいに実はゲルテナの生まれ変わりとか別人格とかも疑ってました。しかも灰の大広間でのギャリーの提案や行動って、概ね美術館のNGルールに抵触していたじゃないですか。コイツに任せると巻き添えで死にかねないぞ、くらいは考えてたし、実際言ってました(休憩部屋での「キャンディー要らない!」)。いやだって「館内に飲食物の持ち込みはご遠慮ください」という張り紙があるのにキャンディーを渡してくるのは、死亡フラグ建設の嫌がらせじゃないですか。返却もさせてくれないし……。

この時点では、私はイヴちゃんと館内の情報(ルールや本)だけを信じていて、ギャリーはそこから外してくる無自覚な敵くらいに思っていたので、休憩部屋での会話はそこそこに通り過ぎたし、コイツいつか致命的なことやらかすんだろうな…て感じでした。Discordで視聴してくれていた面々がこぞって「あとで後悔するよ」(意訳)と言ってたのはそういう事情です。その通りになっちゃったね!

 同様に、当然メアリーも信用しませんでした。初登場で走っていたので。お嬢さん、館内で走ることは禁止されております。ギャリーという爆弾を抱えているのに、これ以上館内ルール無視美少女を抱え込むわけにはいかないんですよ。それに加えて、自分たちが進んでいる方(奥)から来た、見覚えのない金髪という怪しさMAXの美少女を信用できるはずもありません。最初から「……」を選び、敵意を持って接していました。なのに、ギャリーが勝手に仲間に引き込むから!!もう!!!その子嘘はついていないけれど、外に出たいとしか言ってませんよ!!

余談ですが私は何度もメアリーのことを「エイミー」(これは卒論のせい)やら「エミリー」(これは、何だろう…?)やら呼び間違えてました。今も時々間違えてます、ごめんなさい。

 己と館内ルールしか信じないという様相に変化が現れたのが、紫の間での分断です。初めてイヴとは異なるギャリーの視点で「赤い目」を見たことで、あ、おかしい(=ゲルテナ寄り?)のはイヴちゃんの方か、と気付きました。信頼できない語り手ってやつですね。その後のギャリー操作を通じてギャリーがゲーム的に信頼に足る相手、味方だと確信を抱いたので徐々に愛着が湧いてきたところで脱出イベントです。普通に失敗したのですが、既にマネキン破壊のときにセーブ&ロードを覚えていたのでやり直して自力で脱出しました。ファイアーエムブレムの民なので、とりあえず殺して遡るのはお手のものです。(これが私の致命的な失敗でした。)そこからイヴたちが茶の間のカギを開けて階段を下っているときにギャリーがやってくる(助けてくれる)ところで「ギャリーかっこいい!!」になり、さぞかし笑われていたことだろうと思います。

それはそれとして茶の間&紫の間は双方向の協力というギミックに、メアリーの正体がギャリーサイドで発覚し、それが告げ口されるというストーリーの佳境が合わさって最高でした。ゲームメイキングが上手すぎる!!

 しかし、結局1週目ではギャリーにハンカチを受け取ってもらうことができませんでした。なんでだよ!あんなに一緒に冒険してきたのに!!自分で思い返しても、ひどい掌返しですね。アイテム欄が不自然に空白だったりしたので、まだ何か足りないんだろうなと思ったし、これは2週目行くでしょう!(ちなみに足りないのは好感度であって、アイテム欄の空白が埋まるのはギャリー死亡ルートの時だけでした)

 最後に、「絵空事の世界」の前でギャリーかお母さん(偽)を選ばされたのですが、熟考の末に割と意味わからん理由でお母さんを選びました。というのも、「赤い目」からの一連の流れでギャリーに肩入れした私は、逆にイヴを敵(ゲルテナ側)と見做していたのです。心壊描写だけでなく、結局未解決のままですがイヴの周りには不穏な展示品が多すぎました...。つまり、ギャリーには幸せになって欲しいから、イヴは置いて行ってくれ!!絵の中にお母さんもいたよね!?ということです。は???当たり前ですがイヴちゃんが主人公のゲームなので、イヴが脱出に成功するか否かが"BAD"になるかどうかの基準です。あえなくBAD ENDING「ひとりぼっちのイヴ」を迎えました。もちろんセーブデータは分けていたので、その後「片隅の記憶」を見て☀️昼の部(初プレイ)は終了しました。切なくていいエンドでしたね。

好きなENDING3つ

 初プレイの夜にトゥルーエンドを、翌日には全7エンド(「ひとりぼっちのイヴ」は3種類)プレイして、真・ゲルテナ展をも埋めました。自分が怖い。その上で、好きなENDING(そこに至る会話も含む)3つを挙げてみます。

第1位 忘れられた肖像

 ギャリー死亡ルートが良すぎた!!!(大の字)

まず、正史(トゥルーエンド)だと

紫の間でイヴがギャリーを助ける(片隅...等の自力脱出の場合は階段でギャリーが駆けつける)→おもちゃ箱でイヴが先に起きてギャリーを助ける

のところギャリー死亡ルートだと、

紫の間でイヴがギャリーを助ける→おもちゃ箱でギャリーが先に起きてイヴを助ける

なんですよ。この互恵性がハオです。

その上で、メアリーに取られた赤い薔薇と交換でギャリーが青い薔薇を差し出すわけですが(ここのギャリーの(断れるわけないじゃない...)もすごく好き!!)、この後のイヴとギャリーの会話で「怒ってる?」や「ごめんなさい」を選ぶとそんな訳ない、謝ることじゃない等と返してくる一方で、「ありがとう」を選ぶと、「借りが返せた」って言うんですよ。良.........!!!しかもその後、薔薇は取り返せばいいじゃない(たぶんもうこの時点で"わかって"いただろうに!)、あとちょっと頑張りましょ、というイヴへの気遣い...満点............!!!跪いて「大切にするのよ」と薔薇を渡すところと言い、なんですか、アナタが王子様ですか???

そこから屈指の名台詞、「アタシ、ちょっと......ゴメン なんと言ったらいいのか......ウソなんてつきたくないけれど......本当のことも言いたくない......」が素晴らしすぎて、美しき葛藤が凝縮されたこの呻きを何度でも噛み締めたい.........ちゃんとイヴが戻って確認しても「眠っている」て表示されてました......ア゛ーーーー!!最高!!!!

それから、ギャリーの死亡ルートは複数あれど、特にこのルートが好きなもう一つの理由が伏線回収の見事さです。

そもそも私が最初ギャリーを警戒していたように、ギャリーは美術館のルール違反をしがちで、このルートだと特にそれが強く出ます(プレイヤーが出します)。その上で「首を吊るだろう」と予言された彼が「吊るされた男」の位置にあると言う見事な伏線回収。タロットの正位置から逆位置に変化するのも深読みの余地がありそう。そして「ここでの記憶は失われる」という説明通り全てを忘れたイヴ。このルートにおいては全てがきちんと美術館のルールに則っているのが大変好ましいです。

ギャリーの善性やイヴとの関係が正史以上に明らかになる興奮、脱出したイヴが「忘れられた肖像」を気にも留めない物悲しさ、しかしある意味当然という秩序の美しさの共存が、このルートが至高と主張する所以です。

追記

書き忘れていたのですが、ギャリーの表情の中で流し目が一番好きでした。休憩室の会話や、心壊の際のうわ言からうかがえる、何となく彼にもいろいろあって触れてはいけないのだろうな、というあのセクシーな感じと流し目の相性が抜群に良くてとても好き…。ではなぜ好き「だった」という過去形なのかというと、死亡ルートでこの顔をするからです。死に目に会ったせいで流し目が辛くなりました。

追々記

あとこのルート、偽ギャリーがいるのが何ともいいですねえ...おててつないで地獄に帰っていくエンドも同時に見られる喜び。

第2位  片隅の記憶/再会の約束

 これはいわゆるノーマルエンドとトゥルーエンドというやつですね。片隅の記憶で切なさを味わい、何とかすべく2周目をやり込むと(脱出イベントを成功させてはいけないことに気づかなくて、3周目でようやく回収できました)ようやく重要アイテム・ハンカチを受け取ってくれる。普通にハッピーエンドとしてクリアした喜びもあり、好きです。良かったねえ(ほろり)。

このENDは夜遅くまで友人に付き合ってもらってようやく迎えられたので感無量でした。喜びのあまりスクショ撮ったスクショがたくさんあります。はあー良。

第3位 ある絵画の末路

 もう一つはメアリー主軸のエンドから選ぼうと思って選んだのがこれです。

プレイ中に「メアリーも可哀想だよね」と言われ、日記とかも読んだので意味はわかるんですけれど、私はあまり彼女のことを可哀想とは思えないんですよね。むしろ徹底して、絵画が傲慢な願いを抱いて、人間を利用しようとした、という印象が拭えないです。(面倒なことを言い出すと、これも人間例外主義なのかな......)

詳しく見ていくと、近いルートに「ようこそゲルテナの世界へ」がありますが、この分岐はメアリーの好感度じゃないですか。つまり、イヴがメアリーに親切にしていたら、メアリーが友達を見捨ててはいけないと考える。一方でイヴからの働きかけがなければ簡単に見捨てていく。ここでギャリー死亡ルートのことを思い出してみましょう。彼は死亡ルートに突入すると、親密度が高くなくても、「断れる訳ない」と青い薔薇を差し出します。あれ、メアリーのこと考えるとギャリーの株が上がってしまう。

ともかく、私にとってメアリーは、絵画としては傲慢な願いを持ちながら未熟で、利己的でありながらギャリーを殺していかない、という中途半端で哀れな敵に写りました。だからこそ彼女が美術館の存在のルールに違反して、ある意味因果応報とも言える結末を迎えるこのエンドは納得が行くという意味で好きです。あと、メアリー操作になることで展示物が違う動きをするのも面白かったのでこのエンドを選びました。

ハイライトの消えたイヴちゃん……。

追記

友人と話していて考えが整理されたのですが、「みんなはお客様を招くけれど、自分は外に出たい」という日記を読んだうえで、

「ある絵画の末路」→殺さず出たんだから当然の結末だよね

「ようこそゲルテナの世界へ」→外に出るのはどうした!?

という感想なら、「いつまでも一緒」はギャリーの薔薇を奪ってイヴとともに外に出たので、望みを叶えたと言えるのでは、と考えられます。しかしながら、どうにもそれは正しくないと思ってしまうということがわかりました。やはり、絵画なのに外に出ようとすること自体が、私にとってはあるべき秩序に反していて許せないみたいです。一方でその無謀な願いを「持ってしまった」ゆえの、無垢と残酷の二面性(中途半端さ)を持つ彼女のファンがいるんだろうな、と思いました。同意はしないけれどね。

結局何だったんだ…?

⚠️ここからは橙の間・深海の間のネタバレを含みます。

 Ibの世界観の面白さ(、そしてファンの多さに繋がっている魅力)は、真・ゲルテナ展をコンプリートしても結局何だったのか、何も理由が見出せないところかな、と思います。ギャリー操作の時に紫の通路で読んだ「理由なんてない、出口なんてない」ですね。

そもそも何でイヴとギャリーが選ばれたのか、ゲルテナ展とは何だったのか、手がかりだけ残されて何も明らかにされず、不完全燃焼のままです。

イヴに至っては、両親の絵が展示物にあったり、「指定席」や「最後の舞台」というイヴのためにあるような作品もあり、あまりにも不穏......。ねえ何で、「ゲルテナの作品たち」にイヴちゃんが描かれているの?考えていくと、おかしな美術館そのものがイヴのために存在しているようにも見えてきて、それでも特にそこに理由や説明、ある種の答えが与えられていません。

 あと、うっかりさんとガレット・デ・ロワはマジで何だったんだ……?特に何かのギミックのヒントでもなかったし、謎。

この不気味さ、何もわからなさがホラーゲームとしてのIbの魅力だし、もっと知りたくなってしまうと感じました。

まとめ

 ということで、要約するとやっとIbに手をつけて、かなり夢中になってプレイし、ギャリーを疑ったり好きになったりしました。感想の半分くらいはギャリーについて話していたかも...…ギャリー……好き……。

 さて、全エンドクリアしてから、感想等を探すためにすぐにX(旧Twitter)で検索したところ、なぜか最近の投稿が目立ちます。どうやら大阪でIbのイベントをやってるらしい、会期が終わりに近いようだと知った私は、爆速で友人を誘い、チケットを取りました。

ただいま大阪に向かっています。

それでは、行ってきます、楽しみ!