「ゼルダの伝説の主人公はゼルダじゃない」というあるあるネタがありますが、
とうとうゼルダ主人公のゼル伝が出ました。
「知恵のかりもの」です。
ゼルダの伝説シリーズは輪廻転生みたいなスターシステムが採用されていて、
毎回微妙に設定が違うけど主人公の緑色がリンク、毎回微妙に設定が違うけどお姫様はゼルダ、みたいな感じで同じ名前の人物が同じポジションについているんですが、
ゼルダは「知恵」担当というお約束もあるんですね。
(ちなみにリンクが「勇気」、敵役のガノンドロフは「力」)
そこで今回のサブタイトル「知恵のかりもの」が出てくるわけです。
勇者リンクのように武器は振るわないけれど、いろいろなオブジェクトをお借り(召喚)して戦ったり謎解きをするのが、今回のゼルダ姫の立ち位置。
例えばツボをお借りして投げ、相手の気をそらしたりできます。
ゼルダの伝説といえば長らく「謎解き」がメインの遊びでした。
見るからに怪しげな石を動かしたら階段があった! みたいな感じですね。
そしてスイッチ作品のブレスオブワイルド/ティアーズオブザキングダムでは「自由度」が全面に押し出されていました。
見るからに怪しげな石がある
-> 押す?
-> 武器で殴る?
-> 爆弾?
みたいに、選択肢が激増しました。
今回の知恵のかりものでは謎解きと自由度のバランスにテコ入れが加えられた印象です。
例えば、「高い場所に行きたい」「深い谷を渡りたい」「柵の向こうにスイッチがある」「強い敵がいる」などの「謎解きジャンル」を想定し、
「高い場所に行きたいならこういったかりものを使うだろう」というある程度絞られた選択肢を提示してくる、みたいな。
前のブレワイ/ティアキンでは自由度が高すぎてカオスになっていました(それが作風)が、
知恵のかりものでは自由度をある程度絞るかわりに、謎解きの強度を復活させています。
それでいて選択肢はあるので、冒険にプレイヤーの個性が出てきます。
自分の場合、高い場所に行きたいときは「イトチュラ」という天井まで糸で繋いでくれる蜘蛛のようなモンスターを愛用していました。
(天井が無いときはメガドンという上下運動をするモンスターを使いました)
でも他のプレイヤーはメガドンばかり使うかもしれないし、
積み上がる系のオブジェクト(ベッドなど)を選ぶ人もいるでしょう。
このように「個性のある謎解き」が楽しめるのが知恵のかりものの特色です。
一番個性が出てくるのは戦闘でしょう。
相手の出方に応じてかりものを変える戦い方、
「とりあえずビール」みたいな感じでとりあえず剣士タイプのモンスターを出しとく、
コストの低いキース(コウモリ)を連打する戦い方、
ハイコストなウィズローブ(魔法使い)を出して任せる、
ゼルダ姫が頑張る……、
などなど、様々な戦略がプレイヤーの数だけあるはずです。
あえて自由度を前作より落とすことで、プレイヤーの個性と謎解き強度を両立させる。
これが知恵のかりものが提示している楽しさのあり方なんじゃないでしょうか。
以下余談。
キャラクターの好感度には配慮が見られました。
特に娘を旅立たせることになるハイラル王には、「健在なら有能だけどゼルダをかばって裂け目に飲まれてしまう」 -> 「帰ってきたころにはゼルダが成長している」という理由付けというかフォローがあるし、性格としても名君になっていました。
ウギ将軍、サダリ大臣はちょっと頼りないけど憎めないキャラ付けがされていたし、他に自分勝手なキャラというのもあまりいない。
むしろメインキャラである妖精トリィ(トリィの助力でかりものの力が使えるようになる)が感情が薄く打っても響かないのですが、トリィは物語とともに成長しますし。
デクナッツ族は全体的にウザいですが、あれはウザかわいいということにしときます。
余談2。
外伝っぽい立ち位置ながらも、設定的には意外と重要というかハイラル王国の成り立ちみたいなものが判明します。
これはこの作品のみの設定なのか、シリーズ通しての設定なのか気になります…
というわけで自分的にはかなり満足度が高い作品でした。
ボリュームもちょうど良かったです。秋の夜長にぜひ。