推しになんて届くかなくていい③ ふたり推し活終い編

mican
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推しがふたりともグループを卒業しました。私の推し活もフェーズ2に移行します。

2推しちゃんの話、というか推し増しをして幸せ二倍、自己嫌悪も二倍みたいな哀れに死にゆく私というオタクの思い出語りとライブの個人的な感想とか。2推しちゃんなんて呼びたくないのに私が不甲斐なさすぎて、最推しと2推しにしてしまった懺悔がコアです。でもライブは本当に最高で私のふたり推し活終いというハッピーエンドを見ることができます。

推しとの出会い、覚えてますか? 対バンで惚れたり、アイドルの集まるフェスでの接触で出会ったり、知人に紹介されたり、CDやらチケットを押し付けられたり、出会いはみなさん、様々だと思う。私の場合、元ドルオタの同居人の「そう言えば〇〇ちゃん、生誕でこの男の子のイラスト描いてたわ」という一言が最推しちゃんとの出会い。推しの顔とか声とか、グループとか、衣装とか、曲とか、そんなんじゃない。そんなことあってたまるかとアイドル業をするひとには怒られそうな推しはじめだと自分でも思うが、「アイドルが同ジャンルなんてことあるんだー!」というファーストインプレッションから始まっていたりする。数多あるジャンルの中でもひとりでおんおん静かに狂っていたジャンルということで、フックはかなり強く入り、私は彼女と彼女いるグループにじんわりと落ちていった。このあと私は推しのダンスと表情管理が狂おしいほどに好きになる。たとえ、私がキンプリ(KING OF PRISM、最高の映画をこの夏堪能できるので、とにかく劇場へ! 思う存分ペンラを振り、声を出そう! 乗るしかない、このビッグウェーブに!)のオタクじゃなくても、出会えていればゆくゆくは彼女に辿り着いていたような気もする。あまりにも彼女のダンスが好き。と、同時に、箱の彼女とソロの彼女(他のアイドルもそうだが、ファン対自分のときにしか出さない一番魅力的なあの空気)は雰囲気が違うので、ソロの彼女を見ることがなければここまで沼ってなかったかもしれないとも思う。運命とは数奇なものだ。こんなに狂っているのに、これが必然じゃないなんて……。

うってかわって、2推しちゃんの話である。私は、自分の誕生日前後あたりのツアーファイナル、VIPを当てたどころか、最前どセンターを引き当てた。ライブ行けるだけで誕プレ! なんて小躍りしている場合ではない。一周回って、「ほお〜」くらいしか言えなくなった(オタク盛り盛り虚言です、驚いたのは本当)。もちろん、その日は緑色のTシャツを来て、緑色のペンラを振っていた。推しちゃんを目で追っていた。最前どセンとは言え、推しちゃんが後ろに回ることもあるし、せっかくすぐ目の前、こんなにも近くにみんなが見れるんだからと目ん玉かっぴらいてライブを見ていた。そして、訪れる、2推しちゃんからのありえないほどに狙い撃ちのパーフェクトスマイル。ドキドキした。そもそも、2推しちゃん、顔もスタイルもめちゃくちゃどタイプ。かわいい、好きだ、絶対になれない方の憧れの女なのである。ときめきを感じた。(最推しちゃんにも、もちろんときめくし、最推しちゃんの顔も大好きだし、最推しちゃんのスタイルで繰り広げられるダンスの迫力が本当に好き、本当に。比べるようなものじゃなくて、別ベクトルの好き。)2推しちゃんは他担にもおそらく結構優しくて目が合うとばっちりレスをくれる。このグループ、基本的にレスをするような甘っちょろい時間のないゴリゴリのダンス武闘派なので、目線と表情くらいしかレスのしようのないグループかつ、わりと新しいメンバーしか個レスをしない。シンプルに歴が長いと担当が多いこともあってあまり他担にしないのだろう、それか私が推ししか見てないせいで異常な視野狭窄が起きているのかもしれないし、主に座席指定の大きい箱しか行かないからよりそう思うのかもしれないが。そんなこんなで他担への個別レスなんてものがこのグループに存在するとも思いもよらなかった哀れなオタクは最前を運良く勝ち取ったがあまり、免疫ゼロの体にアイドルからのとんでもないレスを浴びて、悩みに悩み抜き、ついに「推し増し」をしたのだった。これは不意打ちの破壊力ってやばいよね、という話である。彼女の他担殺しのパーフェクトスマイルトラップにまんまとイチコロだった。あんなん落ちないわけないじゃん、って笑顔だったんだもん。許されたい。

この頃、すでに最推しちゃんから認知を受け、このライブのあとのチェキチャでは「あの曲でレスしたよ(意訳)」とまで伝えてもらえるほどの幸せ体験をしているのだが、私は絶対に自分には無理だと思いながらもパーフェクトスマイル砲を放った彼女のチェキチャに赴いている。無理、というのは財力もあるが、活力が持たないのだ。推しへリプを毎回6度くらい書き直しては結局送れず、少し仕事が忙しくなればSNSも満足にできない。チェキチャも4割くらいの確率で自己嫌悪で死んでいる。原稿やっているときは、この世のありとあらゆるものが「それどころじゃない」と優先順位が下がる。そもそも、1秒逃したら買えないようなギリギリを生きたことがなく、推しグループを、推しを、追うのはしんどい。今もふつうにしんどい。まあ、しんどさも味だし、だめになるまで追わないのでしんどいな、と思ったら距離を置くようになるべく気を付けている。逃したイベントも多いが、それが自分の推し活なので気にしてない。いわゆる真のドルオタに私はなれないし、ならない。それはドルオタとして現場に立つ上でシンプルに恥なので、私は私の推し方を貫く代わりに、絶対に欲しがらないと決めていた。そんなわけで、ふたりも推すキャパがないところから彼女、2推しちゃんへのコソ推しが始まる。

まずはルールを決めた。認知はされないように応援する。認知をされるというのは、脳のリソースを割かせることなので、それはしたくなかった。それに値しないザコオタクにしかなれないことを分かっていたし、そもそも推しには認知されたくないタイプなので、気付かれずに推したいように推せるならそれが一番だった。大きい箱でオレンジの面積をちょっと増やせればいいな、と。彼女のパートでステージへ向けられ、伸ばされるペンラの本数が増えればいいと思った。それでもきっと、彼女の脳の端に「あの子推しだけど私にもペンラを振るオタク」の影がチラつく日はあるだろう。そんなことはなくていいと思いながら、振ってきた。と、コソ推しとか言いつつ、ちょこちょこと接触している。彼女とのツーショットチェキもあるし、オンラインサイン会で名前を書いてもらったチェキもある。認知は受けないくらいの程度だとは思う。あのライブでこんな格好を、みたいな「もしかして」を匂わせないことを徹底した。かわいい、好き、あのパフォーマンスが良かった、そんな会話を深めにくいことばかりを言った。彼女も、ありがとうと嬉しいばかりを返してくれた。満ち足りるかと問われれば、微妙だと思う。認知受けたい、私の話を聞いてほしい、そんな煩悩はめちゃくちゃ普通にある。でも、やっぱり少しでも思い出すために脳みそを使うようなことはさせたくなくて、勝手に堪えた。これら含めて、ぜーんぶ自己満である。まあ、推し活なんてお金払ってるから許されるだけの驚異的な己による己のための己の自慰行為の進化系なので。

後悔はしてないつもりだ。推し増しすると決めた時に、推し方を制限して自分を守った。認知をもらっていたら、財布や時間や有給や最推しちゃんを天秤にかけてドルオタを降りるしかなくなっていたと思う。どちらかを選んでいる自分をなるべく見られたくはなかった。しんどいから。仕事だし、そんなこといくらでもあるだろうし、そもそも自分なんて掃いて捨てるほどいるどこへ行こうが大したことのない存在と理解していても、好きな人を天秤にかけてどちらかを選ぶなんて大変なことし続けたくなかったし、そんなところを見られたくなかったし。もしかしたら、あっちを選んだんだって悲しませるかもしれない。可能性はゼロじゃない。推しが複数いるって、そういうことだから。保身として、この判断は正解で、私はあんまり苦しむことなくここまで二人推し体制を続けることができた。

そんなこんなで出会いは180度真逆なふたりが卒業した。遠征は行かないと決めていたが、これを行かないでいつライブに行くんだよという話なので、大阪まで行った。台風で当初乗る予定だった飛行機は欠航になり、前日の夜、荷造りも終わってないのにどうにか西に向かう策を探しまくり神戸まで行く飛行機を取った。(神戸空港から三宮めっちゃ近くて感動した、無人運転の臨海を走る電車も気持ちよくていい体験だった。)折角の遠征だしと、ライブを挟んで二泊三日取ったので遊びまくり、そして当日。ギャン泣きした。一曲目から大好きな曲が流れて泣いた。いつも一曲目から感動して涙目になるような音響の圧に感情が動く涙腺ガバガバオタクなので大抵うるうるしているから、ある意味通常運行ではあったが、最推しちゃんのオタクなら絶対好きだろ! という曲から始まってとにかく泣いた。途中、客降りがあり、2推しちゃんが目の前を通ったので、「ありがとう!!! 大好き!!」と叫んだ。聞こえていたかどうかはわからないが、いつぞや私を撃ち落とした「にかーっ!」という太陽みたいな笑顔を向けてくれた。泣いた。泣くだろう、こんなの。会場の照明もオレンジと緑というような、そもそもふたりのためのライブですらある日にオレンジと緑振ってるオタクなんてごまんといただろう、私は実はあなたが本当に大好きでめちゃくちゃ支えられてきたんだよという思いを叫びつつ「きっと、このクソデカ感情伝わんないんだろうなー」と勝手な保身のツケとアイドルへの過剰要求のキモさを頭の端にちらつかせつつ、少しだけ悲しさを感じたりした。でも、伝えられただけ良かったと本当に思っている。卒業ブーストに当てられた今日だけの馴れ馴れしいオタクに見えたかもしれないけど、それでも、私は言いたいことを本人に言えて、めちゃくちゃ幸せだった。ありがとうって叫んだら、一気に感情どばどばになってもう涙止まらなくてずっと目尻と鼻をこする鬱陶しい動きをするオタクになっていた。段差ある席で良かった。目の前のやつがこれだったら絶対に鬱陶しくて後ろの人のライブの満足度を下げていたかもしれない。最推しちゃんと客降り縁は皆無でほぼ姿を見ることも叶わなかったが、首からうちわを提げていたり座席の位置的に自分より前がいない一段上がった場所だったこともありステージ上からおそらくレスをもらえているので、これはまた席運に感謝だなーといったところ。客降りでうまく動ける気がしていなかったので、これは意外とショックではなかった。なぜかスマホの電源もつかなくて撮影可ってなにそれおいしいの? 状態で完敗しててとってもザコなオタクだった。ふたりの激エモパートに涙腺崩壊して涙拭こうと思ったら始まった2推しちゃんのスピーチに泣き、最推しちゃんのスピーチに落ち着き、スピーチ後の曲で2推しちゃんの元相棒の涙でパートが掠れた姿に涙腺が崩壊したまま戻らなくなった。特典会もないし、宿は来日会場から歩いてすぐ近くに取ってあったのでメイクが崩れることは気にせずに涙はそのままダバダバ放置していたが、口や鼻についてちょっと気持ち悪かった。この気持ち悪さもすでにエモさに変換されている。「全部覚えてるなんて言えば、笑われるかな」というふたりのパート、そこがもう、誰に聞いてもあのライブのサビだったと思う(オタク盛り盛り虚言)。あそこを聞きに、泣きに、納めにいく、そういうライブだった。最高だった、ありがとう。意外とメイクは保たれていて、擦らない限りメイクって崩れないもんだよな、と別の感動もあった。めちゃ余談である。私は悔いなくふたりの卒業を見届けることができた、良かった。ハッピーエンドだった。ありがとう、大好き。

最推しちゃんはもう月末に生誕イベントを控えていてグループのラストランからソロはじめまで時間は残り僅かだ。2推しちゃんも後少しのソロイベントを残しておそらく月末には各種アカウントが消されることになるだろう。約2年半、未知のジャンル、未知の次元に飛び込んで、ひとつの節目を迎えようとしている自分によく頑張ったなーとぼんやり感心している。オタクとして老いた心にめちゃくちゃ鞭打ちここまでやってきた、私はリアルタイム性の強いコンテンツが笑っちゃうほど苦手なのでいつもしんどいよ〜と生きてる推しを追ってきた。ちょっとSNSサボると、普通にイベントの告知見逃して叩きも間に合わなくて、本当にきつかった。コンマ数秒を切る叩きなんて人生でやったこともないし、そんなに急かされたオタ活したこともないのによくここまで歴戦の真のドルオタたちを追ってきたと思う、それだけで偉い。自分のペースで推し活してたらなにも楽しくなかっただろうから、自分なりにここは頑張るってメリハリつけられて本当に良かった。(※私は推しから与えられているだけの有象無象で、推しに何かを返したり渡したりできる存在ではない派なので、常に自分ごととして推し活をしています。)ライブから数日しか経ってないのにこうして言葉にするとすっと冷えて随分昔のことのように感じる、アウトプット様々だ。

近日中に推しと文通するみたいなサービスで推しから言葉が返ってきた時に再び感情がぐわんぐわん揺れるのは分かっているけど、一旦これで私のふたり推し活はおしまい。箱としても好きなので、関東の大箱はまだまだ行くつもり。今日も今日とて、推しになんて本当に届かなくていい戯言。(戯言シリーズを思春期に読むと歪むよね、残るよね厨二が、かなり根深く。)10月の渋谷、行く気満々だけど、ほんと、何色のペンラ、振ったらいいんだろうね〜。真の箱推しに、俺はなる!

2024.08.19

@mican
思考の源泉かけ流し