半年くらい前にデンマークの照明機器ブランド Louis Poulsenのテーブルランプを購入して、早朝や夜に読書の手元を照らしてもらっている。キノコ型で全体がぼんやり光を放つ癒しのフォルムと光量感がとても気に入っていたのだけれど、購入してから3ヶ月くらい経ったある朝(つまりいまから3ヶ月くらい前)に気づいたらランプ上部にちいさく薄くヒビが入ってしまっていた。
oh my ...
もちろんぶつけたわけでも落としたわけでもない。わざわざ本国から取り寄せてまでお家にお迎えしたのにそんなへまはやらかすはずがない。どうやら取り付け部品(ネジ)の接続が悪く自然とヒビが入ってしまっていたようだった。故意に壊したわけではないし、製品保証期間はたしか1年はあったっけ。そうだ、あとで時間ができたら購入したショップに問い合わせてみよう。
そう思ってから気づけば3ヶ月がたっていた。
いや、正直に言おう。"気づけば"という表現はあまり適切ではない。気づいてはいた。なぜなら毎朝毎晩読書をするときに点灯して、そのヒビを目にしつつ、くるりと天蓋をまわしてヒビが目に入らないように置き直していたからだ。そのヒビを目にするたびに少しもやっとして、気分がわるくなり、目を逸らしてはのらりくらりと日々をやり過ごしていた。いやな気持ちも悲しい気持ちも気づかぬふりをして、たしかにあるそのヒビを見て見ぬふりをしていた。ずぼら?めんどくさがり?ははは。そうだね、その通りです。
昔からこういうの(修理とか、更新とか、手続きとか)がめんどくさくてめんどくさくて、後回しにし続けてきた人生だった。やったらすっきりするのはわかっている。もちろんだ。後回しにしている限り、頭の片隅にはその気がかりがあって脳のリソースを余分に消費している感覚もたしかにあった。よくない習慣だ。わかってはいるんだ、わかっては。むう。
そんなこんなで3ヶ月ほど放置していたお気に入りのランプのヒビ。ついに一念発起して一昨日ショップに問い合わせて交換部品を発送してもらい、今朝届いてつけ替えることができた。
360°つるつるぴかぴかの天蓋、愛おしさの増したフォルム、乱れのない均質な光量。ああ、なんて心地いいんだろう。心が軽くなり、自然と笑みがこぼれる。どうしてもっとはやく問い合わせて交換してもらわなかったんだろうか。ばかばか。反省。
ヒビを放置するのはやっぱりよくない。
気づいた瞬間はとてもショックで悲しくて、だけどだんだんその感情に慣れてしまって鈍麻して。そうやって少し重くなった体重は日々のパフォーマンスの質を少しずつ少しずつ最高の状態から遠ざけていくだろう。ヒビを自覚しているうちはまだいい。でもいつの間にかそれが当たり前になりすぎてヒビが入っていることすら忘れてしまう。それはぼくたちの遺伝子に自身の心を守るためにインストールされている自己防衛本能のひとつなのかもしれない。工事現場にずっといたら騒音を騒音と感じなくなっていくことと同じだ。
ヒビを放置するのはよくない。それはきっと、ランプだけではない。
話をアナロジーにすり替えたところで、このめんどくさがりってよくないよね話は終わりにしようと思う。オチたことにしてほしい。
ああ、なんだか気分がいいな。ぼんやり手元を照らしてくれているランプの光が心地いい。今日はいつもより少しだけ夜更かしして本を読むことにしよう。