うまれてはじめてから通っているいぬのトリミングサロンが広尾にあり、いぬが一緒なので車で行くことが多い。するとDARUMA STORE TOKYOが車だと6分程度だろうか、とても近いので、待ち時間につい行ってしまう。
編物をするようになり国内メーカーの毛糸をユザワヤに見に行った際。ハマナカやパピーやオリムパスが、かつて手編みが流行った時代についた顧客に合わせ対象年齢層をあげていくスタイルを続けるなか、横田ダルマだけおしゃれと流行に敏感な年若の新規層向けに作ろうとする気持ちを感じた。
ダルマさんの毛糸は人気の海外毛糸のジェネリックとでもいうべきものが多い。「空気を混ぜて糸にしたウールアルパカ」はROWANの人気毛糸に酷似しているし、「シェットランドウール」は言わずもがなジェイミソンズ。引き揃え用のモヘアが流行ればすぐ発売する。他のもだいたいジェネリック元が見つかる。
流行毛糸のジェネリックは今から編物を始めた人間にとって親しみやすいが、いや別にジェネリック元が手に入るのだからそちらを使えばいいと、最初は考えていた。二匹目のドジョウ的もやもやもあったし、色が日本のメーカーがよく使う高齢者向けの(若者には合わない)くすみカラーだったのもある。
しかし色彩はだんだん現代向けに合わせてきた。ランブイエメリノウールを開発したあたりから、毛糸自体の品質も向上させてきたように感じた。合わせて価格も上がったが、それは、安く国内で確実にお届けできるジェネリックを提供しようとするのではなく、原価が上がっても品質の良い毛糸を作ろうとする方針を打ち出したということだ。
考えれば、商品開発努力とは画期的一匹目のドジョウを目指すものの、その1%のひらめき以外の商品は、すぐれたものの模倣をいちはやくすること。それを99%の努力と言う。
ダルマさんは流行に遅れまいと努力し続ける会社なのだ。
横田ダルマさんは京都に本社がある企業だ(ちなみにハマナカさんもamirisuさんも、そしてAVRILさんもそうだった)。そのダルマさんの、待望ともいうべき東京進出。DARUMA STORE TOKYOは、KEITOやMOORITやamirisu &walnut Tokyoのようにおしゃれな、しかしおしゃれといえど"暖かみ"や"かわいい"要素をつい入れてしまいがちな手芸店の常識をくつがえし、DARUMAは東京らしい無機質おしゃれな建物だった。
「相分かった。武家風に改めるといたそう」
『大奥』の一場面が頭をよぎる。やられた。
場所も最初はなぜ渋谷駅と恵比寿駅の中間でどっちからもやや時間がかかる場所に、と思っていたが、行ってみてわかった。原宿から渋谷までの線路沿いはかつて宮下公園があり、感度の高い個人経営店がひっそりと並ぶ道だ。その延長で渋谷から恵比寿間の線路沿いも、おなじ雰囲気だったのだ。しかも恵比寿に近ければ、代官山や広尾にも近いので、原宿に来る10代より可処分所得がある大人たちの来訪が見込める。
大都会のなかで感度の高さをアイデンティティにするような大人の好みにとことん合わせてきたDARUMAさんの企業努力!もう降参したのだ。
■ ■ ■
広尾から車を走らせるなら外苑前のwalnut Tokyoも近い。もちろん青山通りに行くことがあれば寄って直接見る。好きな毛糸も多い。しかし、あまり買うことはない。京都本店からの通販のほうが色展開があり在庫も多いのだ。店舗もセレクトショールーム東京出張所といった趣きなので、消費者もパッと目につく糸があったら心に留めておく、というウィンドウショッピングをしがちだ。
その点、DARUMA STORE TOKYOは、横田ダルマさんの取り扱う毛糸が全種類全色必ずある(irodoriだけはない気がしているのだが、訊けば出てくるのかもしれない? ただ、新宿オカダヤに全色あります)。
それこそ通販でいいじゃないかと思うだろうか。いや、行けば希望の商品が必ずあるという点が、購入意思を持って実店舗に赴く者にとっては、いちばんありがたい。通販では品切れになっていたものもDARUMA STORE TOKYOにはあった。訊けば、倉庫にはなくともここには揃えているという。
全力で東京に根を生やそうとする姿勢、すごい。
駅から徒歩で行くには若干辺鄙な場所にあるにもかかわらず、DARUMA STORE TOKYOはいつ行っても若い人で賑わっている。お母さんと20代の子、カップルで来ている20代もちょくちょく見るので、デートの延長でくるのだろうか。そこも、ほかの手芸店では見ない光景だ。
インスタグラムのタグを追っていると、韓国の若年層にもDARUMAのパターンブックや毛糸が人気あるようだ。amuhibi knit bookが韓国で人気で、その指定糸にDARUMAが多く使われているところから人気がついている様子だな、と感じている。
わたしは大学の時の第二外国語が朝鮮・韓国語で、選んだ理由は、高校生でアメリカにホームスティに行った時、欧米の人は結局アジアの国に興味がないと気づいた。しかし韓国の人は常に日本に興味があるのだ。だからわたしも韓国を知りたいと思った。
ラベリーを見ても、英語圏の人は日本の毛糸に見向きもしない。でも韓国の人は熱心に使いたいと思ってくれる。DARUMA毛糸を通して、インスタでも韓国文化をまた感じたいと、思っている。