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なぜこの子をと聞いたら、「かわいいから」と。サイトに載っているこの子の写真を見てみるが、まったくかわいくはない。価格の高い順にして上のほうに表示される子たちは、垢抜けたカットにされていてかわいい。でもこの子はボサボサのけむくじゃらのお芋ちゃんだ。ちなみに価格は中央値くらいだった。高くもなく安くもない。
しかしこのけむくじゃらのお芋ちゃん、やたらいいね数が多いのだ。他の子と比べてみると、やたら多いどころかこの子だけ飛び抜けている。平均値の５倍以上いいねされている。人気の子のようだった。
紹介文では「めったにお目にかかれない美人な子。マズルが詰まっています。ちいさめの子を探している方にもおすすめです」と書いてある。全部の子に美人って書いているんだろうとそのブリーダーが過去出展していた子を遡ってすべて読んだが、この子にしか「美人」と使っていない。このお芋ちゃんが美人？
他のマルプーの赤ちゃんと比べていて、この子は眉毛がないことに気づいた。マルプーは眉毛に見える目の上の毛がある。それがないこの子にブリーダーは何をもって美人と書いたのか。むしろかわいくないではないか。
来た当初はとにかく育て方の情報仕入れで忙しい。予防接種も済ませ、一ヶ月ほどしてお散歩デビュー。私はせめてもと、腕の良さそうなトリミングサロンを探してお願いした。垢抜けカットにし、ちいさいうちからたくさん外出しパピーちゃんかわいいと声をかけてもらって。育てているとどんな容姿でもかわいくなってくる。ほんとうにかわいい。かわいいからかわいいと声をかける。
そんなあるときわたしは気がついた。トイプードルは眉毛がない！マルチーズはある。なんてことはない、トイプードル寄りの容姿だっただけの話だった。獣医にも「マルプーなの？ ほぼトイプードルだね」と言われるくらい顔がトイプードルだった。
トイプードルのかわいい条件というものは、テディベアカットが似合う顔ということだった。それには、目が黒くまんまるで、目と鼻の距離が近い子。マズルの詰まった、と表現するらしい。おおきい子は必然的に鼻が伸びるらしく、マズルの詰まった顔になるためには成犬体重で2kg前後が望まれているようだ。
満たしている！トイプードル的かわいいとされる要素がつまった顔と大きさだったのか。
みにくいあひるの子だったか。いや、わたしが勝手にかわいい容姿ではないと思っていただけで、ブリーダーさんも夫もいいねをつけていた人たちも、最初からかわいいと言っていた。わたしの見る目のなさよ。
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ある程度いぬの知識をつけてから見ると、この子が美人と書かれていたのは成犬時でもマズルが詰まった顔になるとブリーダーさんが見て予想していたからなのだろう。人気が高かったのは、熱心に小さい子を作出している犬舎ではないところにたまたま産まれた比較的小さい子だったから、極小専門舎の子と比べてかなり割安だったのだろう。
小型犬は小さいほど値段が高くなるようなのだ。
資本主義の市場においては、モノそしてヒトも価値は値段であらわされる。一般的に犬の値段は、小型犬はからだのちいささで決まるようだった。大型犬は血統の良さのようだ。
どちらも資本主義のいやらしさを感じるが、大きさや容姿や血統など飼い主にとっては些細なことだ。一緒に暮らしていればみんな我が子がいちばんかわいいになる。
わたしのところに来てくれたいぬは、ちいさいほうなのだと思う。成犬の標準体型で2.5kgなんてねこよりもちいさい。しかし、近所を散歩している小型犬は、ほとんどの子がわたしのいぬよりもちいさい。みな１kg台なのかもしれない。
狭い住宅事情を抱える東京のいぬはこんなにちいさいものが選択されるようになっているようだ。