1 犬を飼うまでの話

micke
·

犬を飼うかという話にいつの間にかなっていた。どうしてそうなったのかわからないが、夫が私にはペットが必要だと思ったのだろう。おそらく。

ちょうど1年前の話だ。

漠然と、犬らしいかたちの犬がいいと思い、黒い柴犬に絞った。しかし柴犬は初心者には難しいのだという。白いぽわぽわのポメラニアンというらしい犬はどうだろう。でも、どちらも毛がとても抜けるのだという。

わたしは小さい頃喘息があり、猫や犬の毛でも呼吸困難になったため、毛が抜けない犬種がいいだろうということだった。毛が抜けない? そんな動物、自然界に存在するのだろうか。する。羊だ。犬というものは、羊と同じように人間によって改良し続けられた生物なのだと知る。毛が抜けない小型犬となると、ヨークシャテリア、マルチーズ、トイプードルに限られる。

夫はトイプードルが欲しかったようだ。抱いてみて、毛の硬さが気になった。トイプードルという犬種は見た目のぽわぽわさからは意外なほど毛が硬い。コリデールのような手触りだ。色々抱いてみるなかで、マルプーという犬の手触りが良かった。トイプードルがコリデールなら、マルプーはメリノ。この犬ならいいかなと夫に言った。そして都内のペットショップを様々訪ねマルプーをたくさん見た。どの犬も同じに見える。だから夫に選んでくれと言った。

ある休日の朝、夫が突然、ブリーダーさんに連絡したら今日来てくれと言われたので行ってくる、と。ブリーダーさん? どうも、ブリーダーが直接犬を出展するサイトがあるらしい。そこをチェックしていて、いいと思った子が商談中になっていたので、ダメ元で連絡したら、今日の午後に見にくる人が兄妹のマルプーを両方見たいというので抑えてある。その人はどちらかというとオスを希望している。メスを希望しているならば、その人より先に来てくれれば譲る、ということらしい。

そうしてなんだかよくわからないうちに、メスのマルプーがうちに来た。

@micke
essay