こういった論考的文章を書くときはちゃんと参考文献を付すべきとは、いちおう大学院を出た人間、誰も責めなくとも心のうちの自分が責めてくるのだが、まあ外からはアクセスできないしずかなインターネットで書く散文のことだ、わたしの述べることは街裏ぴんくの漫談の類のものだと思って話半分に聞いてください。
"エシカル"というキーワード。
大昔からあるにもかかわらず最近ナウいワードだよみたいな顔をしているSDGsと同様のカテゴリの話で、「環境にやさしいことをしましょう」「人道的に生きましょう」ということだ。
「環境にやさしいことは二酸化炭素を減らすこと!」と掲げた気候変動条約は、ロシアやアラブ諸国へ石油依存を脱却したい、つまりそれらの国力を抑えたいがためにヨーロッパの人たちが捻り出した苦肉の策であるが、
(わたしが子どもの頃は小学校の教科書に石油は20年後枯渇すると書かれて習わされたが、枯渇していない。嘘…まで言ってしまうと良くないが、結論ありきの希望的暴論なのだ)
例えばそれは自動車のエンジンをハイブリットにそしてゆくゆくは完全電気にしようとする動きにつながる。石油依存の大きい製品から、我らがエジソンの偉大なる発明・電気に代替していこうというわけだ。もちろん電気も石油じゃないものからつくるよ!それをクリーンエネルギーというよ!そうなんだ、石油は非クリーンなんだ。という印象操作のわけだ。石油も天然資源だよ。
同じように、「エシカル」といった言葉で「人道的につくられた製品しか買わないようにしましょう」といったスローガンを掲げ、欧州のトップブランドがこぞって毛皮やミュールジングを非難したのは、もちろん、国力を減らしたい対象がいるのだ。
毛皮・羊毛その他毛糸原料の一大産出地の中国である。中国の国力がアメリカを脅かすまで強力になってきたので、耳障りのないスローガンを打ち出し自分たちを正義側として悪とした国へ武力ではない戦争をしかける。
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「人道的 ethical」という言葉は、日本語訳にその言葉を当ててしまうと「人の道を外れないことだな」とふんわりと解釈される。日本語において「人道的」とは「お天道様に恥ずかしくない」つまり「後ろ指刺されない行動」という意味であるが、欧州においての意味は違う。
「人道的 ethical」とは、「自分が何者からも苦痛を受けない権利・他者に苦痛を与えないやさしさ」という意味だ。
この「人道的=苦痛を与えないこと」との思想は、ベンサムが提唱したらしい。経済学の教科書に出てくるベンサム!きみ、こんなところにもでてくるのか。彼の提唱した幸福とは、苦痛(=物理的痛み)を与えられないことを指す。そして「人道的」とは、苦痛(物理的痛み)を与えないこと。そのため、苦痛を感じるだろうヒトはもちろん、その他動物も苦痛を感じそうであるなら、苦痛を極力与えないことが「人道的 ethical」でエリートが守るべき基準とされた。
この考えから、奴隷という"人ではない生物"もどうやら苦痛を感じる生き物みたいだから人道的な私は体罰をやめよう解放運動をしよう、ペットや家畜も痛みを見てとれるから体罰はやめよう去勢・避妊手術も虐待だミュールジングも狭い檻の中で飼い毛を力任せにむしって採取するのも虐待だ、虫や植物だって生き物のはずだが痛みを感じているか人間からはわからないので感じていない!だからシルクや綿麻の栽培はどんな環境でもいいよ農薬を使わない方が望ましいけどね、となっていく。
この思想がヨーロッパの知識層にはずっと下敷きとしてあり、これに反する行動は「非人道的 un ethical」で「野蛮 un civilized」なのだ。
ただそれは欧州の知識階級の思想の話で、彼らが国連など牛耳っているからある程度それが世界標準の顔をしているが、中国は大昔から独自の中華思想で続く国なのである。ヨーロッパのエリートが提唱した思想を押し付けるな、こっちはこっちのエリートが提唱する思想があるわ。というわけだ。最もである。
そのため、東夷・ 西戎 ・南蛮・ 北狄がなにか喚いていることなんて無視して、獣毛の輸出を続ける。中国の動物観は、人と動物、動物のみならず虫・植物も、生きとし生けるものは、みな対等なのだ。なので、対等に戦って服従させた生き物をどうするかは、勝利者の権利だ。人間の政敵だって塩漬けにして食べる。いわんや野獣や家畜をや。そしてその毛は筆などにして、感謝して日々大切に使用する。獣毛を衣服にするのは自然という他者への最大の感謝だ。
相容れない欧州と中国の思想。どちらの思想もよく入ってくる故に板挟みになる日本の消費者。
わたしは、中国が主に輸出しているだろう、ラクーンやシルバーフォックスやアンゴラの毛糸を使っていいのか(中国産アンゴラも欧州から非難されて日本の大手毛糸メーカーは避けているが、工業糸メーカーは気にせず使うので曖昧になっている感ある。もちろん欧州はエシカルな欧州産アンゴラなら良い!と言う)。丸安毛糸が出している中国のテンの毛皮の余ったものから作ったのであろうセーブリッチを使っていいのか。
(イトマでいつも見るポッサム毛糸は…オーストラリアでは害獣だから狩って毛糸にしているよ!とあけすけにカラッと言っているもので、エシカル観点からはいちおうまあ倫理に則るなら眉を顰められる類のものであるはずだが、オーストラリア産で別に誰も欲しがらない動物の毛皮だから、まったく気にされていない、自由にやってくれという、、それもダブスタだが、ポッサム毛皮・毛糸は中国産ではないという点が大きいのだろう、問題にはなっていない)
板挟みだ。とはいえ少し考えることもあるので、続きはまた今度。すっかり長くなってしまい申し訳ない。読んでくれたかたがいらっしゃったら、本当にありがとうございます。