マメ氏の熱が下がらず、連休明けの火曜に小児科に行ってギロリ医師の診断を受ける。ウイルスにはいずれもかかっておらず、なんと風邪をこじらせての中耳炎だった。いや、なんとというほど珍しい展開ではないけれど。むしろまっさきに想起するべき病気のひとつだった。うちの夫はかなりの中耳炎体質だったと、義母から散々聞かされていたのだ。
「耳垢が溜まっていて左耳の奥が見えない。このあと耳鼻科に行って細かく見てもらって」
ギロリ医師にサクサクそう言われ、翌日はギロリ小児科のほぼお隣にある耳鼻科へ。人気の病院で混雑するという口コミを見て開院30分前に並び、なんとか五番目に滑り込む。
名医だという書き込みもあったその耳鼻科医は、ギロリ医師とはまた違うクセの強さを感じさせる男性だった。ギロリ医師と同じく余計な発言はせず、中耳炎だと聞くや
「そこの椅子で見るよ」
と壁沿いのカメラ付き椅子を指差し、低い声でビシリと言う。私が移動すると、すばやくカメラをマメ氏の耳に突っ込み一通り中耳炎の説明をし、また元の椅子を指差して
「戻って耳垢を取るよ」
とビシリ。元の椅子に座ると屈強な看護師が二人左右から現れ、マメ氏の足と顔を全力で押さえる。マメ氏は首でも取られるかのような声を上げて泣いていた。左耳からは小石のような耳垢がとれた。最奥にあり、綿棒などではとれないから定期的に耳鼻科で取るしかないらしい。もともと左耳だけ湿った耳垢が出るとは思っていたがまさかそんなことになっていたとは。中耳炎は抗生剤で治すしかないということで、小児科でもらった薬を使って様子を見ることになった。ビシリ耳鼻科、これからお世話になることだろう……。
さて、帰宅後も中耳炎のせいで気分が悪いらしくマメ氏はシクシクモード。離乳食も嫌がり、好物だろうととろとろにしたものだろうと口に入れるとキレてブーブー吹き散らかす。食卓でただ泣いて終了はかわいそうだなあーと思い、週に2〜3回だけ解禁している野菜の赤ちゃんせんべいをあげたら夢中でむさぼり食べていてちょっと怖かった。糖分が人を操作する瞬間を見たようだった。
薬を飲み始めたら一応回復の兆しが見えてきたのだが、ここからがむしろ大変だった。菌が死んでいっているため黄色い鼻水や目やにが大量に出続けるうえ、咳にも痰がからんで喉が詰まるようになり、咳の激しさで胃の中のものを丸ごと出してしまうのである。単純に咳吐きだから出してしまえばケロリとしているものの、ミルクを飲んでくれないと水分不足になるし、なにより薬を吸収できないのが困る。
鼻水を垂らし始めたときにすぐ病院に行けばよかった、と後悔したが遅い。おかげで昨日今日と一日中マメ氏の鼻水とゲロにまみれていた。今日の朝は3回も戻されて、育児が始まって初めて心が折れそうになった。離乳食も2セット灰燼に帰した。かれこれ1週間看病に費やしているので私の体力も限界に近づき、ずっと微熱だったのが午後には盛大に上昇。親子揃ってヨレヨレのゼコゼコ状態になってしまった。中耳炎、恐ろしい。
そんなわけでマメ氏にとっても親側にとっても過酷なこの10日だったが、マメ氏は峠は超えた感があり、いままでよりはましな寝息を立てている。明日はもう一度ビシリ耳鼻科に行く。