寝る子

mikipond
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午前中、いつものシッター・Cさんの部下にあたるSさんが来る。Cさんが多忙らしく交代になったのである。

Cさんは看護師・助産師資格を持っている人で、Sさんは産後ケアリストという民間資格で活動している一児の母だ。優しい人だったが、ちょっとした仕草や言葉遣いひとつで「ああ、専門家ではないんだな」とわかるのが面白かった。普通のお母さんという感じなのだ。Cさんの言動が医療現場対応のそれなんだということがよく理解できた。

いろんな産後ケア・シッター団体があって最初はどこに頼もうか迷ったし、さまざまなシッタープラットフォームでも民間資格系の人に比較的安価で依頼できたりするけど、継続ヘルパーを頼んだのがCさんでよかったと感じる。退院後すぐの産後ケアも、病院勤め経験のある助産師さんに来てもらっていた。私は産後ケアもヘルパーも、自分の負担を軽くすることと同時に「専門家の技を勉強する」ために手配していたので、初期のうちは医療職の人を呼んで正解だったと今振り返っても思う。こういうことは運動とまったく同じで、最初のうちに細かく正しい情報をインプットすることが、結局その後の基礎力として効果を発揮するのである。

Sさんに、「抱っこの寝かしつけは新生児期以外あまりしていない。基本的に、昼寝も夜も寝室に置いたらそのままぐずりつつも一人で寝てくれる。夜は6〜8時間くらい連続で寝てくれるので19時以降は1、2回しか授乳しない」と話したらかなり驚かれた。

S「それはトレーニングをしたんですか?」

私「いわゆるネントレってほどのことはしていないですけど、とりあえずベッドに転がして寝るまで粘るのを何度もやりました。興奮してたら抱っこして落ちつかせて、でも寝る前にまたベッドに置いて。昼夜逆転だけは、とりあえず最初の1ヶ月でひっくり返せるように頑張りましたけど」

S「すごいですね、みんな寝かしつけの抱っこで大変な思いをするのに……」

私「私が赤ん坊だったら、抱っこされた状態で寝て、そのあといきなり硬いところに置かれたら不愉快で起きると思うんですよね。だったら最初から平らなところで寝た方が快適だよなと思って、それで早いうちから抱っこはやめたんです。あと単純にあまり疲れることもしたくないので」

S「お母さんがそれだけ落ち着いているから、赤ちゃんも信頼して眠れるようになったんですねえ」

母親の落ち着きが子どもに与える影響についてはよくわからないところがあるが、少なくとも私とマメ氏の組み合わせにおいて、私の考える「刺激しない」作戦が功を奏したのはたしかだと思う。

私の場合はとにかく生後1ヶ月くらいまでの間に穴が開くほど赤ん坊を観察し、どんな体調・状況のときにどんな声を出すのか、体力が尽きてきたらどんな仕草をするのか、どんな表情のときに寝やすいのか、などのデータをとりまくったのだ。もちろん赤ん坊は成長し続けるのでそのデータも刻々と更新しなければならないわけだが、それでもなんとなく子どもの体力ゲージやバイオリズムはつかみやすくなり、生後2ヶ月くらいの時点ではだいぶ余裕をもってあたれるようになった。

かつてジーナ式(赤ん坊の睡眠に関する、おそらく現時点でもっともハードなトレーニング本)の本を読んだとき、「ここまで厳密なのは無理!!」と思ったが、「今までに数千人の赤ちゃんを見てきたが、本当に何をやっても寝られない赤ちゃんは数人しかいなかった」といった記述だけはずっと頭に残っていた。赤ん坊がいかにパワフルとはいえ、生き物である以上絶対に体力の尽きる瞬間はくるし、基本的にはバイオリズムも一定になるよう調整されていくはずだ。「まったく眠らない、一切リズムもできない」ということはよほど特殊な要因がない限りないだろうとふんで、赤ん坊がどれだけぐずろうがイレギュラーな動きをしようが、淡々と体力を削り、ヒートアップしていたら落ち着かせ、「そのうち眠るもの」として扱っていたら実際に寝るようになってくれたのだった。まあいろいろな組み合わせが幸運だったのだろう。

シッターさんが帰ったあとは、友人のタンゴダンサー夫妻が遊びにきた。マメ氏を可愛がってもらったり、みんなでU-NEXTでダンス映像を観たりして楽しく過ごす。

@mikipond
まめとき日記(豆と未樹の日々の記録)/宗岡(小池)未樹です。23年8月に生まれた子ども・マメ氏との日々のことをひっそり書いていきます。