高校〜大学生のころ、私の世界が今よりもっと狭くて、手の届かない光ばかりを見て、生きていることが本当に苦しかった時、物語の中だけが現実のつらさを忘れられる場所だった。
高校生のときは、いつも本を持ち歩いていた。けれど、大学生になって、本を読むこともつらくなってしまった。その、一番しんどかった時期に、私になぐさめを与えてくれたのは、pixivに投稿されていた二次創作小説だった。
当然、それを読んだからといって、心に根をはっていた不安を取り除くことはできなかったのだけれど、少なくとも小説を読んでいる間だけは、生きている意味があるような気がしたものだった。
あれから10年、私は、とても驚くべきことに、書く側にまわっている。お話を(自分で書いたものを「小説」と言うのは少し気恥ずかしい)書き続けて、もう4年となり、本当にありがたいことに、私が書いたものを気に入ってくださる方もいる。
最初に二次創作をしていたpixivアカウントはまだ残していて、たまに見に行くと、ぽつぽつとブックマークを頂いていたりする。ブックマークが増えるのは、たいてい土曜〜日曜で、私は通知が来ているのを見るたび、昔の、物語だけがよりどころだった自分を思い出す。この数字の先に、昔の私がいるような気がする。顔も知らない、私の作品を気に入ってくれた誰かの力に、ほんの少しでもなれていたらいいと思う。
もちろん、私はあくまで私が楽しいから書きつづける。たぶん、これからもずっと。
物語は、今を生きる人のためにあるのだと、私は思う。まだ私は、誰かが紡いだ物語に生かされている身ではあるけれど、だからこそ、私は物語の力を、それを生み出す人の心を、ゆらぐことなく信じている。
BGM:ドリームレス・ドリームス(Acoustic Arrange)/はるまきごはん
