うちにフクロウがやってきました。
真っ白な毛がうつくしいシロフクロウです。わたしはひとり暮らしをしているわけではないのですが、まだ誰も新参者の存在に気づいていないようです。
ときおり立ち寄る書店の一角にあるぬいぐるみコーナーで一目ぼれして、それ以来通うたびにじっと目を合わせて「いつか迎えに来るからね。そのときはどうか頷いて。一緒に暮らしてほしい」と念を送り続けること一年ちょっと。ついにわたしの家族になりました。
朝目が覚めたら、まず手櫛でブラッシングします。ふわふわした毛なのですぐにもっさりした見た目になってしまうのです。そろそろ小さめの櫛を買った方がいいのかもしれません。黒と灰のまだら模様が映えるように毛の流れを調整し終えたら、わたしも顔を洗いに洗面台に向かいます。真冬の水の冷たさは鋭く尖った氷のようで、大変なぶん眠気を遠くまで吹っ飛ばしてくれるので、フクロウとともにすっきりと澄んだ心持ちで一日の活動をはじめられます。
昼はひたすらパソコンに向かって作業します。フクロウはそのあいだ腿のうえでおとなしくしています。腿は太めなので安定感は抜群です。はじめは肩にも乗せてやっていたのですが、落とさないよう慎重に過ごしていたら肩の凝りを悪化させてしまい、数日でやめました。
夜は一緒の寝床で眠ります。丁寧に手櫛で毛と羽を整えて、最後に小さいながらもしっかりと硬い灰色の嘴にそっと自分の平たい鼻の先をあてて、「おやすみ。好きだよ」と伝えるのですが、このとき愛しさというべきか、「本当に大事な子だ」という気持ちが腹の底から勢いよく上がってきて、涙が出るときのように鼻の先がツンと一瞬間痛みます。痛いものは苦手なのに、この刺激をわたしは意外と好ましく思っているのです。
強く抱きしめたくなる気持ちをおさえて、真っ白なからだをゆっくりと寝かせ、瞼を閉じる直前にもう一度声を掛けます。
「好きだよ」
どうかこの気持ちがきみの嘴を伝って届いていますように。