10月2日(月)
朝。寝起きの調子が悪い。またお粥をつくる。味がするものを食べる元気がなかったので、塩のみの、ほぼ無味のお粥。やわやわで甘みのうすいキウイも食べた。母が買ってきてくれていたのをすっかり忘れていた。
あとは勉強、勉強、勉強。午前は漢検、午後は色彩検定。色彩の勉強はエネルギー消耗が激しいので暫く放置していたけれど、数週間ぶりに手をつけると楽しい。自分が学びたいと感じたタイミングで勉強をすると、わからないことばかりでかなり疲れる作業の繰り返しでも、理解していく楽しさを見出すことができる。学生時代の強制感のある勉強はずっと苦痛だったなと思い返したりする。
夕食後、まじっく快斗に没頭。昨日見た劇場版名探偵コナンの軽い予告映像に、怪盗キッドの正体である黒羽快斗の映像がちらっと流れたのでつい読みたくなってしまった。5巻を買い損ねていたので注文しなければ。
就寝前に色彩の参考書を読んで眠る。
10月3日(火)
強い倦怠感に襲われる。目覚めてすぐ植物たちの様子を見た後、あまりにだるくてまた横になり、数時間起き上がれず。
昼。なんとか布団から抜け出すことに成功。風呂掃除で気持ちを切り替え、続けざまに部屋を掃除。ベランダに放置していたエバーフレッシュの置き場所をやっと決めたので部屋へと移動させる。てっぺんに住んでいる白い蜘蛛も一緒に。
夕方。母が帰宅。ホタルイカの沖漬けを買ってきてくれたらしい。私も母も沖漬けというものを食べたことがなく、どんな味がするんだろうねという話の中で母がホタルイカのことを「海の宇宙人みたいよね」と言い出す。茹でると目がギョロっと飛び出るその異様な姿が、漫画や映画でよくみる宇宙人に似てるらしい。考えたこともなかったと返したら驚かれた。だって、ホタルイカのことそんなまじまじと見たことないんだもの。茹でると目が飛び出すなんて知らなかった。夕食に食べた沖漬けのイカたちは確かにどれもギョロギョロしていた。母との会話によって、ちょっとグロテスクさが増した。苦手な味だった。
夕食後、朝から続く倦怠感がピークに達しソファから動けなくなる。鼻も詰まった。頭がぼんやりしてどうすることもできない。幼い頃から続く慢性的な鼻炎は一度詰まると厄介で、啜ってもかんでも、解消するどころか悪化する。最善の処置はひたすら鼻水を垂れ流し続けること。両穴にティッシュを突っ込みながら寝る。
10月4日(水)
母の誕生日なのでケーキを作る。好物のミルクレープにする。朝から足りない材料の買い出しへ。スーパーで牛乳と生クリーム、それから祖母のおつかい品を買って帰宅。早めに昼食を摂り、11時過ぎ頃からスタート。
作り始める前は完成を想像してワクワクするのに、作り始めると途端に己の要領の悪さに気が滅入る。我ながら気分の落差の激しさに毎度驚く。効率が悪いのでどんどん作業の無駄が増えていき、増えるごとにネガティブな気持ちも蓄積。こうすればよかったが何度も繰り返されて、やがて「こんなにうまくいかないうえに味までマズいものが出来たら最悪だ」という妄想に囚われて頭を抱えたりする。作り始める前の、自信満々だった自分はもう思い出せない。
お菓子作りは難しい。スマートにこなせる人は、何度も作って経験を重ねているからこそ知識があり、対処法を知っている。初心者が最初から効率よく、なんでもきっちりうまくいくことなんて有り得ない。と、わかっていても、上手いことやれない自分を痛感する時間はしんどい。耐え難い。人生もそんな感じで、最初から完璧を目指してしまって、結局うまくいかずに挫折する、を繰り返している気がする。お菓子作りのなかに己の人間性と人生の縮図を見てしまう。
とは言え、お菓子作りは途中でやめるわけにもいかない。何より母への贈り物であることを思い出しながら作り続ける。ミルクレープ作りには焼いたクレープ生地をまるく切り揃える作業があるが、それはやってもやらなくてもいい作業である。焼きっぱなしの生地を重ねてもミルクレープであることに変わりはない。切り揃えればちょっとだけ見栄えがよくなるだけのこと。不器用な自分には絶対に向かない作業なので、これはしなくてもいいやと、焼く直前まではそう考えていた。
が、焼けた生地はどれもこれも全部歪。端っこはガタガタで破けまくり、まとも直視できない。悲惨なクレープ生地を前に、このまま重ねたら絶対まずい(見た目が)と確信。結局渋々切ることに。
でも、今日のミルクレープ作りの過程で一番楽しいと思えたのがこのまるく切り揃えていく時間だった。ガタガタ生地の上から、ひとまわり小さいまるい皿をのせて、皿の縁に沿って包丁で撫でるだけ。生地が薄く柔らかいので、軽い力で切ることができる。不器用でも問題ない簡単さ。切り取った端っこがなくなったお皿を持ち上げて、感動した。とても綺麗な、まるでお店のような円形のクレープがそこにあった。あんなにまずそうだった生地が、綺麗に丸くなるだけでこんなに美味しそうに見えるとは。急に調子付いて、めちゃくちゃ楽しくなってくる。料理における見栄えの大切さってこういうことなんだ、と身をもって体験しながら、るんるん気分で綺麗なクレープを増やしていく。面倒な作業が一番楽しかったりする、ここにもまた人生の縮図が。
完成直後、失敗した生地やら切り落とした端っこやらを余ったクリームにつけて食べてみたが、なんだかイマイチだった。やはり初心者にはレベルが高すぎたかもしれない。しかし夕食後にケーキを食べた母と弟にはすごく美味しいと好評で一安心。落ち込んだりはしゃいだり忙しなかったけれど、贈る相手が喜んでくれたのでオールオッケーとする。
10月5日(木)
朝。寒い。掛け布団はタオルケット一枚から薄い羽毛布団へと変えたのに寒い。震えながら窓辺の植物たちを眺める。人間がこんなに寒いんだから、植物たちは窓のそばでもっと寒いんじゃないか?でも最低気温はまだ15度を下回っていない、大丈夫なんだろうか?など考えながらしばらく横になって過ごす。早く温湿度計を買いたい。
昼に昨日作ったミルクレープを食べてみる。生地がもちもちで美味しい。市販のミルクレープはクリームのしつこさに胸焼けしてしまい二口も食べられないが、これはかなりあっさりな甘さに仕上がっていてペロリと完食。ケチって安い植物性のクリームを使ったのが良かった。この程度の甘さなら食後のスイーツにはピッタリで、だから昨日の母と弟には好評だったのかと納得した。悪くない出来だったので、祖父母にもお裾分けする。
食後の勉強は集中が続かず、15時辺りで完全に途切れる。帰宅した母と共にケンタッキーへ夕食を買いに行く。目当ては、期間限定のにんにく醤油チキン。ザクザクの衣が最高。にんにくを感じる香りと絶妙な味付けも素晴らしい。バンザイ。優勝です。通年販売してください。期間中、毎週食べようか真剣に悩んでいる。
10月7日(土)
朝。寝ぼけ頭で葉水をしていたら外から耳慣れた太鼓の音やらドラの音が聞こえてきて、地元のお祭りのことを思い出す。近所を祭囃子が練り歩いているんだろう。
おやつの時間、誰にも食べてもらえずに熟れ切ったバナナが3本余っていたので食べる。お祭りといえばチョコバナナ。家にあったキューブ型のチョコレートをいつくか深めの皿に放り投げて、牛乳と砂糖をかけて、電子レンジで数十秒チン。スプーンでぐるぐると溶かして出来たチョコソースに熟れきったバナナを指で一口サイズにちぎってまた放り投げ、ソースをまとわせて食べる。超簡単チョコバナナ。
勘でつくったチョコソースはかなり甘ったるかった。バナナの甘味がほぼしない。それでもチョコバナナを食べているという満足感が嬉しくて、胸焼けしながら3本一気に食べてしまった。
子供の頃、屋台の食べ物は高いという意識が頭に刻まれていたのでめったに屋台で買い物をしたことがなく、だからなのかお祭りを楽しんだ記憶も薄い。大人になった今なら100倍くらい楽しめる自信がある。欲望のままにチョコバナナを買いまくり、チョコバナナだけでお腹をいっぱいにしてやりたい。
10月8日(日)
寝起きがすっきりとしないまま植物へ水やり。グリーンベルベットは水やりの間隔を少しずつあけていくことにした。葉が垂れてきても我慢する。外にいる間、ガンガンに直射日光を当ててしまっていたせいでかなり弱々しくなってしまったエバーフレッシュの様子を見る。枯れ切った葉を切り落とし、活力剤を与える。色の落ちた葉がなくなるだけでも少し元気そうに見えた。
植物たちの面倒をみていたら眠気も覚めてくる。朝食に母のお手製サンドイッチを食べる。具はレタスとスクランブルエッグと焼いたベーコン。からしマヨがよく効いていて美味しい。衣替えの予定が、あまりにも寒くて断念。映画を観て過ごす。
夕食に初めてホッケを食べる。白身魚といえばこんなものだろうと想像していた味とはかなり違っていて、どちらかというとホタテとか、貝に近い旨味がした。意外性が面白くて、そしてすこぶる美味しい。焼き魚はどれだけ美味しい魚でも、食べ進めるにつれて疲れを感じる。最後の方は味わうことよりも無駄なく食べ切ろうすることに必死になりがちだけど、ホッケというものは、どれだけ骨が多くても全く疲れなかった。どこを食べても、最後までずっと美味しいから。真剣に隅々まで食べていたら、いつのまにか食卓は私一人だけになっていた。
寝る前に少しだけ色彩の勉強を進める。このペースで勉強して、まったく合格する自信がない。検定料は結構高かった。無駄にはしたくない。眠っている間に知識が定着することを願う。