いつも隣に座る電車のお姉さん

mincho
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朝番の日に乗る電車は、満員電車を避けるためにちょこっと電車賃が高くなる線を使っている。

始発なので人はほとんどいない。

なので私は定位置を見つけた。

しばらくしてからいつもある駅で乗ってくるお姉さんが隣に座っていることに気づいた。

いつもだんだん眠気が出てくるくらいの駅で乗ってくる人なので、私はよく目を瞑っていることが多い。

ちゃんと顔は見たことないけれど、いつもおしゃれ。きっと同い年くらい。

そして私より数駅前で降りていく。

私の出勤はシフト制で不定期なので、毎日その電車のその席に座っているわけではない。

お姉さんの存在に気づいたことがなんだか少し嬉しくて、その駅に着くと「お姉さん、今日も来るかな?」と少し薄目を開けて確認している自分がいる。

勝手に仲間意識が芽生えて、降りていくお姉さんに今日も出勤頑張ろうね、と心の中で声をかけている。バレるわけないけどバレたら気持ち悪がられるかも。

私は勝手に朝早く出勤する同志のように感じているけど、お姉さんが私のことをどう思っているかはわからない。

私がいない日のお姉さんはどこに座るんだろう?

もしかしたら、私がいなければ端っこの席にお姉さんが座れているかもしれないから、今日は端っこ座れない日かぁって残念がってるかもしれないし。

もしかしたら私じゃない誰かが座ってるのかもしれないし。

絶対に声を交わすことのないお姉さんとの間には何も生まれてないはずなのに、何かある気がする。

というか私が勝手にお姉さんとの見えないつながりに少し元気をもらっているだけ。

もしお姉さんと話すときが来るとすれば、電車の中に閉じ込められてしまうとかそんな事件が起きたときだろうなぁ。いつもこの席に座ってるなぁって思ってました!とか言われるのかなぁとか、最近はお姉さんの隣に座りながら、寝ぼけながら、そんな妄想をする。

お姉さんのことを文章に書きたいなと思ったけど、まんまん万が一、ケータイの画面が見えてしまって気づかれたらきっと嫌な思いをさせてしまうから、おうちで書いている。

本当はあの朝の電車の時間に書けるとよかったんだけど。

同じお姉さんが隣に座っていることに気づいたときの私はちょっとだけ心が温かくなったから。

ルーティンって変わり映えしないと思っていた毎日の中の変化に気づくことができて、毎日が面白くなるものなんだなぁ、なんかいいなぁって思いました。

@mincho
渋谷にある共創施設の運営スタッフの傍ら、編集者・ライターのアシスタントを始めました。文章を書くことの楽しさ、言葉を大切にする人の尊さを実感する今日この頃です。