仕事で新卒の採用活動をしている。
と言ってもまだ今年で3回目だが、この時期が来ると憂鬱で仕方なくなる。
単純に残業が増えるしそのせいで住民税も上がって何もいいことがないというのも一つの理由だけど、何より精神的にキツい。何回も失恋してる気持ちになる。
採用活動って実質恋愛なんだよな。
まず弊社のような知名度皆無な中小企業には待っていても学生は来ないので、こちらから必死にラブコールを送るところから始まる。
すると数人から応募が来て、面接をすれば「御社が第一志望です!」と熱烈にアピールされ、弊社のどこが好きか語ってくれる。そんなこと言われたら好きになるじゃん。
でも、当たり前だけど学生ってそのアピールを色んな会社にしてるんだよね。
ぜひ来てほしい!と思って内定出したら「辞退させていただきます」だよ。御社の今後のご活躍をお祈りするんじゃねえ。
そんなわけで毎年「告白してきたのは向こうなのに振られた」みたいな気持ちを抱えながら採用活動を頑張っている。
話は変わるが、地元の新聞社が発行している新卒学生向けの冊子に、各企業の若手社員へのインタビューを掲載してもらうというのがある。県内企業は大手から中小まで結構載っていて、弊社も高いお金を払って毎年この企画に参加している。
それが今年も発行されたので、確認がてら他企業の記事にも目を通していたら、見覚えのある顔があった。
2年前にうちの最終面接落とされた子だ。
最終まで行ったような子は結構覚えているのだが、特にこの子は印象に残っていた。一次面接の時点でかなり緊張していて受け答えも辿々しく、それでも素直で真面目な印象を受けたので、当時は密かに応援していた。
しかし弊社の役員に落とされた。
あまりにもコミュニケーション力に不安があるとかそんな理由だった気がする。
残念に思いながら不合格通知を送ると、なんと電話がかかってきた。「もう一度受けさせてもらえませんか?」と。断るのはかなり心苦しかった。
その子が、隣の市の会社で働いて、笑顔で記事に載っている。
内容を読むと、うちの会社のこういうところを魅力的に思ったとか、生き生きと働いている様子が綴られている。
え、弊社は?
あんなに好きって言ってくれたのに?
何だこれ寝取られか?
寝取られというか、「こっちから振った相手が新しい相手と幸せそうにしててショック」みたいな。いや元カレも元カノもいないから完全に幻肢痛なんだけど。
今年もまた、失恋の季節になった。