マルチケイパビリティじいさん

mio
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我が家は何回目かのリフォームをしていて、毎日大工さんが来てくれている。大工さんというとどこか寡黙なイメージがあるけど、彼は柔和でつい話しかけたくなってしまう。目が合うと「さ、面白いこと言っちゃうぞ」みたいな表情を返してくれる。どこかおしゃれで、太い黒ブチ眼鏡がとても似合っている。

この前ちょこっと立ち話していたら、私と同い年くらいの娘さん・そしてよちよち歩きのお孫さん(&これからうまれるお孫さんも!)がいるみたい。

それを夫に話したら、「おじいちゃんが大工ってかっこいいよなあ」と言った。たしかになあ、何でも作ってあげるんだろうね、と返すと「でもアキラ(私の父)もすごいよな」と続いた。

たしかに冷静に考えればすごかった。

この会話以来、父のことを我が家では「MCJ(マルチケイパビリティじいさん)」と呼んでいる。

父アキラは高校の数学教師を定年退職してから、ワンコイン数学塾ってのを始めていて、マンツーマンで近所の子たちに数学を教えている。集団指導ではできなかった対話重視の指導が楽しいそうで、この前生徒さんの進学実績を聞いて驚いた。では便乗だ!と思って去年から私の長女をオンラインで指導してもらっているが、彼女も数学は見事に得意科目だ。

手先が器用で、孫用に踏み台や手押し車を作ってくれたし、地元青森で農家さんのお手伝いをしているから、いつも季節の野菜をどっさり送ってくれる。娘たちが赤ちゃんの頃から、授乳以外の世話は何でもやってくれたし(私不在時はワンオペ泊まり対応可)、彼女らはとにかくおじいちゃんが大好き。

運動が得意で、この前なんかテニスの勝負でスマッシュを決められた。薪割りをしているから背筋がバキバキである。銭湯で一緒だった夫いわく、腹筋も割れているらしい。

ちなみに私は運動音痴だけど、父と遊んだテニス、バドミントン、卓球は生涯スポーツになっていて、スポーツ万能な男性友人にさえ勝てちゃったりする。

私と楽しく飲み明かしてくれるし、私が潰れても翌朝ケロッと起きていつも通りお茶を淹れ、りんごを剥いて孫たちにあげている。

娘たちの進路について過剰に不安になる私の話を聞いて「大丈夫だ!」とペロンと言うけれど、経験値が違うから説得力があり、不安が消えてしまう(不定期に再燃はするんだけど)

私が中高校生のときも数学を教えてもらっていたけど、お互い血気盛んだったから「お前の教科書の開き方が悪い!!」「もうやだ!もういい!!!」みたいに決裂したこともあった。制服のスカートをおなかでくるくる折ってるのが見つかって家でド叱られたこともあったし、なぜか彼氏の前で頭をパーンと叩かれたこともあった!(なんでだっけ!)

でも祖父になった父は...なんて最高なんだ。

たぶん父自身は変わっていなくて、私が父を見る角度が変わったんだろうな。そう思うと、祖父になった父との関わりは、人生の第n章感がある。

いやーもうお父さんたら!かっこいいなー!

@mio_me
戻りーマンで2児の母。髪を明るくしました。生き急ぎがち。札幌に住んでいます。