おばあちゃん

mio
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公開:2025/6/5

たまに思い出して、胸がチクっとなることがある。高校卒業まで一緒に住んでいた祖母のこと。

大学入学のために実家を出た時点でピンピンしていた祖母は、私が初産で里帰りしたとき、痴呆が始まっていた。

私の両親は共働きなので、日中は祖母・私・乳児・犬*2の生活。会話が成立しない5つの生命体が共に過ごす10時間。一番戦力になるはずの私は産褥期。

全身痛いし眠いし、14年前の青森といえど9月は暑い。お昼過ぎに乳児も祖母も寝て、私もやっとウトウトしてきた...と思ったら回覧板は来るし犬は吠える。「みおちゃん帰ってるんだってぇ〜?」とご近所さんがいつの間にか玄関にいるし、町内放送は大音量で響き渡る。パジャマのまま夕飯を作り、ひたすら父母を待つ...みたいな飽きない産休ライフを送っていた。

ある日の夕方、カレーを作っていた。お肉と野菜を炒めて煮込み、あとはルウを入れるだけ...の状態で娘がギャン!と泣いたので一旦台所(実家のキッチンは台所と呼ぶ方がしっくり来る)を離れた。

数分後戻ったら、祖母が鍋に醤油をドバドバ入れていた。肉じゃがを作る途中と思ったみたい。「いい味してら〜」と味醂と酒にも手をかけていた

私はキレた。

高校生まで一緒に住む中で、おばあちゃんに怒ったことはなかった。なんとなく祖父母には優しく接するべきと思っていたから。そんな私がプッツンキレて「何してるのよ!!」と叫んで泣いて、勤務中の母に電話までかけて喚き散らした。

おばあちゃんが傷つくのはどこかでわかっていたけど、プッツンが上回ってしまった。案の定、不自由な足を引きずって自室に戻っていくおばあちゃんを横目に見ながら、チクっとした痛みをあえて無視して怒りを止めなかった。

私が小さい頃から、毎日台所にいたおばあちゃん。きっと、なーんかわからないけど孫っぽい人と赤ん坊がいて、何か食べさせなきゃと思って台所に行ったら作りかけの肉じゃががあったから味付けをしたら、怒られて。

私はなんてことをしたんだろう。

家族が空腹じゃないかとにかく気にして、いつもいつもご飯の心配をしていたおばあちゃん。

時間を巻き戻せるなら、「ありがとう!」と言ってそのまま肉じゃが作ってもらって、一緒に食べたらよかった。きっと長年、お礼を言われることがなかったおばあちゃん。今の私は「ありがとう」を受け取ることがどれだけ人を元気にすることか、痛いほどわかるのに。

もう本当にごめんなさい。ああ、なんてことをしたんだろう。

@mio_me
戻りーマンで2児の母。生き急ぎがち。札幌に住んでいます。