夏冷えと酷暑

杳茫
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 今だけはいい季節だ、と心から思う。最高の夏日、最高の気候。街の温度計は25℃を指していても、やんわりとした日差しと冷たい風で気にならない。夜に窓を開けていても、暑いどころか肌寒いくらいだ。でも今だけ、夏は唐突に牙を剥く。その日がいつになるのか分からない。そして、今年で12年目の、長らくお世話になっている賃貸マンションにはクーラーがない。毎年、いつか引っ越そう、来年には引っ越そうと思っているものの、夏の2ヶ月程度を我慢したら残り10ヶ月は本当に文句がないくらい個人的に好きな物件だ。いつまでお世話になるのやら。

 毎晩夜風で身体を冷やした結果、まあまあの風邪を引いた。鼻水が止まらない、たまにくしゃみ。埃に反応してる可能性もある、週末は中規模の掃除でもしよう。あと何日もしないうちに、茹だるような夜がやってくる。それまでに対策をしておかなければ。


 ……と書き置いたのが先週のこと。数日のうちに、あれよあれよと夏の湿った暑さと不快感が背に迫ってきた。気がつけば鬱陶しい夏の襲来だ。どれだけ外気温が低くとも、湿気が酷ければ不快感もある。ある日から湿度が増し、吹く風はぬるく、夜になっても変な湿っぽさが残る。さらにこれから夏真っ盛りを迎える、本当に嫌だ、暑いのも嫌だし台所が蒸すのも嫌だ。食材の足が速くなる。一時期はものが腐ることを恐れてプロテインしか飲めなくなった時期がある、もちろん短期間で身体を壊した。食事は摂った方がいい。唯一、夏野菜と豚肉が旨く感じることが増えるのが嬉しい。今年も身体を壊さないようにしていきたいと決意した矢先、所用で酷暑の東京に赴く羽目になり、熱中症に罹り、旅先で点滴を打ってもらう羽目になった。夏、許すまじ。

@mioonda
離れがたい孤独