毎月1日は映画が安くなる。
なぜ1日に必ず安くなるのかわからないが、習慣として1日に予定がないと映画を観に行くことが多い。2024年6月1日もそんな気持ちで映画『関心領域』を観た。
ずっと気持ち悪い、嫌な映画だった
それはアウシュビッツ収容所の隣で暮らす幸せな家族の物語というプロットに対して本作が描こうとしていた違和感のようなものではなく、そこで表現される絶対的なニセモノ感に気持ち悪さを抱いてしまった。室内なので聞こえないはずの外の音。銃声。人の声。不自然な映像。
その演出意図は理解できるのだが、あまりにも自然でない。本作ではホンモノの映像に対してニセモノの音で演出している。そんな気がしてならなかったのだ。(実際に本作のいくつかのシーンはアウシュビッツ収容所の隣で撮影されている)
映画の音響効果については本映画のパンフレットにも引用のあるドキュメンタリー作品『ようこそ映画音響の世界で』にも詳しいが、よりリアルに聞こえるように映画の音は実際のものとは別のものを代わりに使っていることがある。
そういった流れの中での音楽による映像演出という手法はもちろん理解できる。ただあまりにも確固たるメッセージに基づきすぎていた恣意的な演出にあふれており、これではまるで1つの方向に傾倒していくような危うさのある偏り方と同じではないか、とさえ感じてしまったのだ。
そしてさらに問題なのは、話題作と聴いて観に来た人の多くが寝ていたことだ。
それはこの演出手法で彼ら彼女らの関心領域を揺さぶることができなかったという何よりも証拠だと思う。そして、逆説的に本作で訴えている最も大きなメッセージが関心のある人にしか届かないということを露呈させてしまったということではないだろうか。
一応補足するが、本作は映画作品としては120点以上の素晴らしい作品だと思う。ただ、本作は見た人の行動を変えるような映画ではない。それこそがこの映画が持つ「関心領域」なのだから。